「日本人ジャズ系ギタリストの音源を聴く」というテーマでマイお気に入り音源について綴るこのコーナー、第2回は「華麗なる日本のジャズギタリスト達ーLIVE AT STB139,Vol.1」というCDについて書いてみます。なお前回の記事はこちらです:
今を遡ること9年前の2007年の5月23日、今はなき六本木のスイートベイジルで収録されたライブ・アルバム。9名のスーパー日本人ギタリストの演奏を聴くことができます。ギタリストの間では有名な1枚。
華麗なる日本のジャズギタリスト達ーLIVE AT STB139,Vol.1
参加ギタリストは高内春彦、山口武、布川俊樹、杉本喜代志、滝野聡、市野元彦、矢堀孝一、秋山一将、菅野義孝の各氏。これだけ多様なギタリストの演奏を1枚で聴けるCDはなかなかなく、しかも同じ日のライブなので普通のコンピレーション・アルバムとは違います。単なる いろいろな演奏詰め合わせセットではない のであります。
何かこう、 同じ場所に違う人がたくさん集まっている感 がすごくあり、演奏も生々しくて素晴らしいのです。私は残念ながらこの日この現場にはいなかったのですが、実際に観た方が本当に羨ましいです。
私達は誰でも最初、アメリカのギタリストが好きで聴きまくるわけです。そしてなんてカッコいいんだ、なんて美しいんだと思いながら、ウェスやグラント・グリーンやジョンスコやカートの世界に近付くべく練習する。最初は誰にもそういう模倣の時期があるはず(ない人もいるらしいけど…)。
このCDで演奏されている9人の方々を「日本の◯◯」と呼ぶことは適切ではないと思いますが、やはり最初は同じように米国のジャズに感動し、憧れ、練習しまくって、影響を消化し、歴史を継承しつつ、それぞれの表現に行き着かれた偉人たちと思うのです。
グラント・グリーンの音楽が別の人の身体の中に取り込まれるとこういうことになるのか、ジョンスコはこのように消化され、日本の地で新しい音楽となるのか、という感動があるのです。たとえばみんなウェスを聴いて育っても、ウェスがぞれぞれの中でどのようなかたちで残るのかは同じでないし、その違いがおもしろいと感じます。
さらに面白いのが、例えば矢堀孝一氏がディストーションの効いたソリッド・ギターで “Inner Urge” を弾かれているのですが、クリーン・トーンでスイング・スタイルで弾かれている方々の演奏と違和感がないのです。これはやはり、この場にいたギタリスト全員が「確実に何かを共有している」ことの証なのだと思います。
このCDは残念ながら絶版で入手するとしたら中古しかありませんが、絶対に聴いておくべき歴史的名盤でありましょう。そしてもし「何かジャズギターに興味あるんだけど…」みたいな友達がいたら、これを聴かせてあげて、その人が気になったギタリストのライブに行くことを勧めるのも良いのではないかと思います。
なおライブ当日は小沼ようすけ氏、岡安芳明氏、吉田智氏も参加されていたようです。そして翌年にはギラッド・ヘクセルマンも参加したvol.2があったらしい。それらは録音がないようなので残念。いまこのメンバーでまたライブをやれば、たぶんあっという間にソールド・アウトになるでしょう。何処かでやってくれないかな。
SPICE RECORDS (2007-12-19)
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