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朝鮮中央テレビに学ぶ

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最近YouTubeで朝鮮中央テレビ(北朝鮮)のあるニュース番組を見たのですが、そこでは「口撃の極北」とでも言うべき壮麗な言語世界が展開されていて、衝撃を受けました。フリースタイルダンジョンのラッパー達が可愛く見えるくらいのディスです。

他人の悪口や嫌味は、私は嫌いです。それは何も産まないどころか、言う側も聞く側もエネルギーを奪われてしまうからです。しかし下の動画に見られる言語戦闘は前人未到の境地に達しており、ある種の抽象性を獲得してしまっているので、聞いていて何故か嫌な気分になりません。未知の宗教の聖書の朗読を聞かされているかのようです。

聞いていて “Yeah” と思わず呟いてしまった箇所を数か所抜粋してみます。特に下線部のところに反応してしまいました。

  • 毎日、狂った行脚を続け、世人に嘲笑されている朴槿恵逆徒が再び、前後の区別もできず腐臭がする悪口をほざき世論に叩かれていますが、それについて今日はお話ししたいと思います
  • しかめっ面で表れた逆徒アバズレは体面も何もかなぐり捨て骨に染み込んだ同族対決、敵対の毒気を吐き出しました
  • また、朴槿恵アバズレは毒蛇の舌をペロペロ出しながら(…)無礼にも恐怖政治だの人権蹂躙だのと言いながら私たちの最高尊厳まで冒涜しながら脱北を扇動するという狂ったラッパも躊躇なく吹きました
  • 精神が錯乱しきって物事をまともに判断できず極度の幻覚状態に陥っている老いぼれたアバズレやることがない暇人のように、馬鹿なことをほざくのは、珍しいことではありませんね
  • 肝臓も胆嚢も引っ張りだし我々を圧殺してくれと、父親のように慕ってきた米国親分すら国家核武力完成の最終関門を通過した我々の目映い飛躍を前にして空っぽのほらを吹きながら自分の背中に落っこちた火の粉を消そうと必死
  • 目前の現実に、はらわたをねじらせ切った朴槿恵逆徒が頭に浮かぶ幻覚を既存の事実だと言い張りながら恐怖政治だの飢餓だの、暴圧だのと言いながら我々の尊厳高い姿に墨を塗ろうとあがいているのは、実に、未練がましく惨めなざまです
  • では、今日の話はここまでにし、次の時間に続きを話しましょう
  • そうしましょう

これはジャズの文脈で言うなら、ジョン・コルトレーンが “Impressions” のようなモード・チューンを吹きまくっているようなものです。敵国の大統領を罵倒し、自国の首領を賞賛するという非常に単純な図式の中で、どれだけカッコ良く暴れられるか、暴れ続けることができるか が鍵となっていますが、かなりの出来超えです。

ジャズ・ギターで言うなら、パット・マルティーノの “Sunny” が与える感動に近いものがあります。弾いて弾いて弾きまくる。感情を顔に出さず涼しい顔で16分音符で弾きまくり、埋め尽くす。しかし胸には熱情がある。冷たくて、熱い。グルーヴィー・アズ・ヘル。シーツ・オブ・サウンド。

朝鮮中央テレビは「シーツ・オブ・悪口」といったところでしょうか。類義語による反復は代理コードの使用を、過剰な修飾語はターゲット・ノートへのアプローチを想起させます。時々アメリカを登場させることで音風景に広がりを持たせる。唐突に現れる下品な単語はアーティキュレーションの参考に。

何を言っているかが理解できるという意味では完全にインサイドな表現でありながら、これだけの破壊力で言葉を繰り出し続けられるのがすごい。最後に「次の時間に続きを話しましょう。そうしましょう。」と聞いた時は、まだやれるのかよ! もう30コーラスくらいやっただろ! とモニターの前で怯みました。

今度セッションでモードや一発ものの曲をやる時は、このニュースのことを思い出してみたいと思います。簡潔な構造の中で、どれだけやれるか。暴れられるか。表現し続けられるか。俺はこの戦いに負けるわけにはいかない ー (※何とも戦っていません)。


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