可能なら、いつかピックを捨ててみたいと思っています。指だけで弾けるようになりたい。
残った指で同時に他の音を弾くことはありますが、私は基本的にピック弾きです。でもピックじゃないほうが本当は良いんだろうな、自然なんだろうな、と思うことがよくあります。
ピック弾きの良いところは、やはり速く弾けることでしょうか。あとは音色のバリエーションが広いこと。ダイナミクスもつけやすい。
指弾きの良いところは、まず音色が良い、という意見もあると思いますが、個人的にその最大の長所は「楽器との一体感が得られること」ではないか、と思っています。
サックス奏者は、指とキーのあいだに落としてはいけない紙のようなものを挟んでいないし、ピアニストは指と鍵盤のあいだにビー玉を挟んで、そのビー玉を転がしながら打鍵したりしていない。そんな制限があったら本当にイヤだろうと思います。完全に罰ゲームレベル(笑)。
でもピックでギターを弾くということは、それに近いナンセンスなことをやっているのではあるまいか、と思うことがあります。元々難しい楽器なのに、余計に難しくしているのではないか。
そしてピックを使わないギタリストたち… ウェス・モンゴメリーは勿論、ジョン・アバークロンビーや日本の小沼ようすけさん・市野元彦さんらの演奏を体験すると、速いパッセージが登場しないわけではないし、そもそも感動的な演奏にとって超速パッセージが必要不可欠ではないこともわかるし、音色とダイナミクスのコントロールもすごい。
本当はピックをやめたほうがいいんだろうな、と思います(ピック弾きの輪郭のはっきりした音色も、勿論好きなので悩ましいところですが…)。
私は全然指で弾けないのですが、たまに指で弾く練習をすると、発想が変わってくるというか、普段あまり使っていない頭の回路がアクティブになる感覚にとらわれます。出てくるフレーズも変わります。手癖的フレーズ・リック的フレーズは絶対出てこない(難しくて弾けない)。
でも、左手と右手のタイミングがずれることがなくて、その絶大な安心感が良いです。右手の指は、訓練しないと速くは動かないけれど、意図しない動きはしない(多分)。ピックを持つと交通事故みたいなことが起きてしまう(まぁ私がヘタだからなのですが)。
何というか、自分から嘘が出てこない。本当に必要な音しか出てこない。
すぐにピック弾きをやめるわけにはいかないのですが、少なくとも練習時には指弾きする機会を増やすと、自分の中の「歌心」により向き合えるのではないかと思っています。