魔法、というと大袈裟かもしれませんが、「基本的なセブンス・コード」だけで「テンション入りのカラフルなコードサウンド」を表現できる例について書いてみます。
この記事では、とりあえず下の5種類のセブンス・コードに精通されていることを前提条件とします。下のコードのアルペジオをギターのあちこちで弾ける方向きの内容です。
- メジャー・セブンス (例:CΔ7)
- マイナー・セブンス (例:Cm7)
- マイナー・セブン・フラットファイブ (例:Cm7(b5))
- マイナー・メジャー・セブンス (例:CmΔ7)
- ディミニッシュ・セブンス (例:Cdim7)
本題に入ります。まず下は普通のCΔ7です。特におもしろいことはありません。でも、指板上の何処ででも弾けるようにしたいところ(参考記事:2オクターブのセブンスコード・アルペジオをギターで弾くための96通りの方法)。
次にCΔ7(9)を見てみます。9thが足されたものです。これ、上の4つの音だけ見ると、Em7になっています。このことから「CΔ7(9)をアルペジオで表現したかったら、Em7を弾けば良い」または「Δ7(9)を弾きたかったら、3度からはじまるマイナーセブンスコードを弾けば良い」と言うことができます。
さらにテンションを乗せてCΔ7(9, #11)にしてみます。リディアンのサウンドなのですが、上の4つの音はGΔ7になっています。つまり「CΔ7(9, #11)をアルペジオで表現したかったら、GΔ7を弾けば良い」または「Δ7(9, #11)を弾きたかったら、5度からはじまるメジャーセブンスコードを弾けば良い」と言えます。
次にマイナーコードについて見てみます。同じように、9thテンション、11thテンションを載せていきます。Cm7(9)のサウンドが欲しい時は、EbΔ7(または3度からはじまるメジャーセブンス)を弾けば良く、Cm7(9,11)が欲しい時はGm7(または5度からはじまるマイナーセブンス)を弾けば良いということになります。
次にドミナント・セブンスを見てみます。C7(9)の上部構造はEm7(b5)になっています。つまりナチュラル9th入りのドミナント・セブンスコードを弾きたい場合は、3度の音からはじまるm7(b5)を弾けば良いことになります。これはAm7(b5)氏の多重国籍問題:記者会見の模様というおバカ記事に登場していたあの人の話ですw
オルタード・ドミナントの場合はどうでしょうか。C7(b9)を観察すると、上から4つの音はEdim7になっています。3度からはじまるディミニッシュ・セブンスを弾くと、b9th入りのシンプルなオルタード・ドミナントセブンスを表現できることに。そしてEdim7はGdim7, Bbdim7, Dbdim7と同じ。故に「半音上のディミニッシュ・セブンスを弾けば良い」とも言えます。
そしてこの番組をご覧いただいている皆様に限り今回は特別に!(意味不) Cm7(b5)にナチュラル9thを乗せた場合は何で表現できるのかをご紹介。上から4つの音、EbmΔ7になってますね。スケールで言うとLocrian #2、メロディック・マイナーの第6転回形。#2(ナチュラル9th)のテンションが格好良いです(好きじゃない人もいるかもしれませんが)。
こんなふうに「基本的な」セブンスコードだけで様々なサウンドを表現できます。コンバージョン・アプローチ、代理アプローチですね。このアプローチの最大のメリットは、考え方をシンプルにできるということでしょうか。この記事に登場したセブンスコードは5種類で、各セブンスコードの「4つの音」だけで色々なテンション入りコードのサウンドを表現できています。
上の例は全てではなく、また、「基本的でない」4音から成るコードを自分で考えて、それが何かのコードを表現できないか考えてみるのも楽しいです。
実際にこのアプローチでシングルラインの表現を試してみる時、「音が4つ使えるのはわかった。でも残りは何の音を使えば良いのだ」という話になったりするのですが、#11thや11thテンションまで音を積むと、もう6音。7音スケールから1音足りないだけです。例えばCΔ7とGΔ7の構成音を足すと、ないのはA音くらい。十分楽しめます。
スケールの知識のある方は、各コードに合ったスケールを使うだけで良いですね。あとはクロマチック・アプローチを足せば「素材」としてはかなり揃っています。
勿論アルペジオが弾けるようになったからといって美しいメロディがスラスラ出てくるわけではないのが悩ましいところですが、少なくともメロディの発生を促したり、メロディとメロディの間を繋いでくれたり等、私にとっては便利な小技で、とても重宝しています。
指板を広く見られるようになるのも良いです。例えばCΔ7の時にEm7やGΔ7のエリアも「活動範囲」として見えてくる等。また、Em7的なフレーズ、GΔ7的なフレーズを何か持っている場合はそれをCm7上で試せる等。発想が広がります。省エネ万歳!