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サブドミナント・マイナーについて

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サブドミナント・マイナーと呼ばれるものがあります。

コードには大別してトニック・サブドミナント・ドミナントの3つの機能(役割)があり、どのコードも大体そのどれかに分類されるのですが、たまに「サブドミナント・マイナー」という言葉も耳にします。これが少しややこしいところがあると思うので整理してみます。

「サブドミナント・マイナー」は、簡単に言ってしまうと「マイナー・キーにおけるサブドミナント機能のコード」です。が、単にそのように定義する方と、「IVm7の3度の音(スケールの基音から見るとb6の音)」が入っているものだけを特に「サブドミナント・マイナー」と呼ぶ、と定義する方と、分かれることがあるようです。

この記事では後者の定義、つまり「b6の音が入っているサブドミナントのコードをサブドミナント・マイナーと呼ぶ」ことにして話を進めてみます。

ところでマイナー・キーでは主に、ナチュラル・マイナー、メロディック・メイナー、ハーモニック・マイナーの3種類が想定されます。するとサブドミナント・マイナーに相当するのは、下の図の赤線で囲んだ部分になります(画像はクリックまたは指で拡大できます)。

サブドミナント・マイナーについて

※なおTはトニック、SDはサブドミナント、Dはドミナント、SDMはサブドミナント・マイナーの略です。各スケールには別名もありますがとりあえず1種類のみ記載しました。機能分類については人によって意見が分かれるものもあるようなのでご注意。

こうして見ると、メロディック・マイナーには「b6の音が入ったサブドミナント・マイナー」は存在しないことがわかります(6度がナチュラルなので当然ですね)。ちなみにハーモニック・マイナーのVIIdim7には、b6音が含まれるのですが、機能的にはトニックに強めに進行するドミナント。サブドミナント・マイナーと呼ぶ人はいないようです。

そして「サブドミナント・マイナー」という言葉は、マイナーキーよりもむしろメジャーキーにおいて話題に上ることが多いように思います。例えば、C Majorの曲があったとして、同主調のC Minorからサブドミナント・マイナー・コードを借用する、という考え方で作曲されているものが結構あり、その解説などに登場します。有名どころの例としては、

  • I Love You (ナチュラル・マイナーまたはハーモニック・マイナーからのIIm7(b5)の借用)
  • Days of Wine and Roses(ナチュラル・マイナーからのbVII7の借用)
  • Just Friends(ナチュラル・マイナーまたはハーモニック・マイナーからのIVm7の借用)
  • Night and Day(ナチュラル・マイナーまたはハーモニック・マイナーからのbVIΔ7の借用)

などがあると思います。ちょっと面白いのが、ドミナント・セブンス・コードのbVII7や、メジャー・セブンス・コードのbVIΔ7なども「サブドミナント・マイナー」と呼ばれるところ。メジャー系のコードなのにマイナーと呼ばれてしまう。これが結構ややこしくて、むかし混乱したことがあるのを覚えています。

そして同じ機能に分類されるコードは多くの場合、頭の中で入れ替えてフレージングしてもうまくハマることがあり(コードに共通音が多いから自然なことですね)、例えばbVII7とIVm7はどちらでもサウンドグッド、みたいに思えれば便利な運用が可能になります。

例えば「酒バラ」の2小節目のEb7と7小節目のBbm7、どちらもサブドミナント・マイナーであり、しかも「Bbm7-Eb7」というペアにもなりますが、指板上ではほとんど同じ場所に同居しています。

曲を理解するために、そして自分なりの演奏ができるようになるためにスタンダード曲を分析する場合、「このコード何処から出てきたんだろう?」と悩むことがよくあるのですが、サブドミナント・マイナーの借用だった、みたいなことがわりとあると思います。他に転調とか、作曲者に何か意図があって変わった名前のコードネームが付けられる場合もあり、そちらのほうが解明が難しかったりします(ジョビンとかこれが多いなぁ…)。

いずれにしても、サブドミナント・マイナーが登場する場合、ものすごく難しい何事かが発生しているわけではなく、メジャー・キーとマイナー・キーが二重国籍状態になっていて、マイナーのダイアトニック・コードが使われているだけです。

豆知識: こんな風に、同じ基音のままメジャーとマイナーを自由に行き来する、または別のタイプのスケールと自由に行き来する(例えばC MajorとC Dorianとか)ことを「モーダル・インターチェンジ」(モードの相互変換)と呼ぶことがあります。


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