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たのしいバッハ (1)

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Johann Sebastian Bach (ヨハン・ゼバスティアン・バッハ。1685 – 1750) の作品に学んでいるジャズ・ギタリストは少なくないようです。

ベン・モンダーは朝、彼自身がギター用にアレンジしたバッハのコラールを弾くのがルーティンだそうです。先日見たアダム・ロジャースの教則動画(Adam Rogers (Technical Studies) 1)では、主にテクニック強化の面でこういうのを弾いているんだよ、とやはりバッハを弾いていました。

YouTubeにはギラッド・ヘクセルマンによるこういう演奏もあります(※これは難しいことをやっているように見えます。すぐに真似できなくても落ち込む必要はないので注意!)。バッハ、みんな好きですね。

大バッハの音楽は基本的に「線的な旋律(リニアなメロディ)でハーモニー(和声進行)を表現している」と言えるので、その意味ではチャーリー・パーカーがやったことと同じ方向性です。バッハの場合はそれを複数の声部で表現する(対位法的)曲が多いのでより複雑な結果にはなることは多いのですが、バップと基本的な発想は同じ。

というか、バッハの時代、音楽はまだどちらかというと即興音楽、ライブミュージックが中心で、「楽譜にして残す」という作業のほうがむしろ例外的だったのだ、と何かで読んだことがあります(※うろ覚えなので間違っていたらすみません)。その意味でも大バッハはジャズ・インプロバイザー的な存在だったのではないかと思います。

あのJ.S.Bachという人は、楽譜で残っているような演奏をいつでも即興でプレイできたらしいのです。最近パット・メセニーは、自分の目標はバッハだ、みたいなことを口にしたらしいですが、まあ、たぶんあんたらは同じ領域にいるよ、という感じです。

私自身はエチュード的にバッハを弾くようになったのはここ数年のことです(ジャズをはじめた大学生の頃、バッハとジャズはまだ頭の中で結びついていなかったのでした)。実際に弾いてみると、「7度ってこんなに美しいのか!」とか「ダイアトニック6度ってきれいだなあ!」とか「対位法的なことをやらない理由ってないよな…」等々、学ぶことが多いです。

では実際にどんなバッハの曲に学べば良いのか? バッハのどんな曲がジャズ・インプロヴィゼーション技術向上のために良いのか? と思われる方は多いと思います。

でも、そういう考え方はちょっと違うと思います。実際に自分でバッハの色々な曲を聴いてみて、「これ弾いてみたい!」と思ったものがあれば、耳でコピーするなり、楽譜を買ったりするのが良いと思います。アダム・ロジャーズと同じ曲を弾いてみても多分全く意味がないと思います。自分が弾きたいと思った曲をやってみる。それでいい。それがいい。

私自身はバッハのピアノ曲、バイオリンやチェロの曲の一部分を時々練習します。曲全体を、ということはあまりなくて、ピアノ曲の場合はそもそも両手をギターで再現することはできないので、気に入った部分の右手だけ、左手だけを練習したりしています。

例えば鍵盤楽器のために書かれた「イタリア協奏曲(Das Italienishes-Konzert, BWV 927)」の第三楽章のPresto。

最初の24小節の右手の部分だけギターで弾くと下の楽譜のような感じになります。運指に難しいところがあり、「ちょw これどう弾くんだよww」という感じで悩むのがまた楽しかったりします。2声の対位法的な旋律も、ギターでは十分に表現可能なのでこれを普段の演奏に取り入れない理由はないなあ、と思ったり。トライアドってこんな単純なのになんて美しんだろう、と感動したりします。

Das Italienishes-Konzert, BWV 927


 
テクニックの強化は勿論、これ何のコードだろう? 何を考えて、何処に向かっているんだろう? と推測してみるのも楽しいし、モチーフの展開という面ではもう神以外の何者でもないし、実際にジャズ・スタンダードの即興演奏でフレーズやアイデアを使ってみることもできます。上の曲だったら、たとえばすかさずFの曲で試してみると良いと思います。クロマチック・アプローチを加味するとわりとすんなりサウンドするフレーズも多いと思います。

なおコピーの際は「全部の声部をギター1本で完璧に再現してやるんだ!」という完璧主義は捨てたほうが良いと思います。気に入った部分のエッセンスを自分の中に取り入れる、という感じで、何より楽しんで弾くのが良いのではないかと思います。もうとにかくメロディーとインターバルの宝庫です。最高です。

時々、何故か「ジャズ」という言葉でカテゴライズされる音楽を聴きたくない時があります。「ジャズ・ギター」と呼ばれる音楽はなおさら「お腹いっぱい。もういい。」という時があります。勿論、それでもジャズは好きなんだけれど、そういう「疲れている時」でも、バッハの音楽だけは「聴きたくない」と思うことがありません。

バッハだけは、これまでの人生で一度も飽きたことがありません。そしてこれからもないと思います。もしジャズと呼ばれる音楽をやらなくなっても(それは多分ないと思うのだけれど)、その時でもバッハの曲を適当にアレンジして弾いて楽しんでいると思います。ES-175とかES-335で。

バッハ, J. S.: イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971/ヘンレ社/原典版 バッハ, J. S.: イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971/ヘンレ社/原典版

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