セブンス・コードというものがあります。任意のスケールのダイアトニック音を起点にし、ルート・3度・5度・7度と積んでいった結果発生する、4音から成るコードです。
その「任意のスケール」は何かというと、ここではメジャースケール(アイオニアン、そしてその全ての転回形=チャーチ・モード)、そしてジャズでは必須のメロディック・マイナーとハーモニック・マイナーの3種類とします。その3種類のスケールから発生するセブンス・コードは、まとめると次の7種類になります。
- major 7 (Ionian, Melodic Minor, Harmonic Minorに共通して存在)
- minor 7 (Ionian, Melodic Minor, Harmonic Minorに共通して存在)
- dominant 7 (Ionian, Melodic Minor, Harmonic Minorに共通して存在)
- minor 7 b5 (Ionian, Melodic Minor, Harmonic Minorに共通して存在)
- minor major 7 (Melodic Minor, Harmonic Minorにのみ存在する)
- major 7#5 (Melodic Minor, Harmonic Minorにのみ存在する)
- diminished 7 (Harmonic Minorにのみ存在する)
こうして見ると発見があるものだと思いました。ダイアトニック上にディミニッシュ・セブンスが存在するのはハーモニック・マイナー・スケールのみなんですね。そして下から数えて3つのコードはメジャー・スケールには存在しない。
そしてさらに面白く、かつ便利な法則でもあるのですが、これらの7つのセブンス・コードで、「テンション入り」の実に様々なコードまで表現できてしまう。
有名な例では、例えばCΔ7(9)をアルペジオで表現したい場合、Em7(minor 7)を弾けば伝わります(ルートはないけど)。Cm6を弾きたかったら(ちなみにマイナーシックスはセブンスコードとしては扱われないという意見が多いと思う) 、Am7(b5)を弾けば同じこと。F7(9)omit RootもAm7(b5)で表現できるし、 Am7(b5)はB7(b9 b13)としても使える。
こういう「置換の法則」は本当にたくさんあってとても便利です。便利というか、その法則を無視して、様々なテンション付きコードもフォームを個別に記憶して行く…というのは現実的ではないと思います。何百種種類ものコードフォームを記載した本に意味がないと思うのはこういう理由です(但しTed Greene本には良いところもあると思うのですが…)。
任意のテンション付きコードのアルペジオを瞬時に弾くためには、やっぱりこういうシステムを使っていくのがいちばん良いと思います。というか個別に全部記憶している、という人には会ったことがありません。
G7(b9)のアルペジオを弾け、と言われたら、さっと出てくるのはG#, B, D, Fのdiminished 7アルペジオ。という人が多いのではないか。他の楽器のことはよくわからないのですが、ギターという楽器の特性上、こういう考え方をしないと結構きついと思います。
なら「仕方なく」こういう代理関係を使っているかというと、そうでもなかったりします。というのも、たとえ使っている音が結果として同じであっても、別のアルペジオをあてはめて使うとニュアンスがかなり変わって不思議な雰囲気になることがあり、それがイマジネーションを刺激してくれることがあります。
これは個人言語の開発とも密接に関係していると思います。
何を表現するために、どんなアルペジオを設定するか。これにはある程度の定石的なセオリーがあり、解説している理論書もたくさんありますが、自分なりの方法を発明するのもとても面白いです。ベン・モンダー、カート・ローゼンウィンケル、ジョナサン・クライスバーグはこういうことをよくやっているように思います。
…と、書いていていま思ったのですが、この記事では「7」という数字が非常に重要なようです。7つの基本的な7thコード。私は無宗教者ですが、何かここには数的秩序でもあるのでしょうか。