ぼくはとても調子が悪い。どんなに頑張ってもぼくのアドリブにはキャッチーなところがなく、印象的なリズムもなく、つまらないと言われてしまうのだ。
このままでは魅力的な演奏はかなわないので、ぼくは「ジャズギター診療所」に行った。亜波黒先生という、立派なカイゼル髭を生やしたおじいさんが一人でやっている、町に一軒だけの小さな診療所だ。
「ふむ。ソロがどうも印象的なものにならない言うのだね。キャッチーさが足りないと?」
「そうなんです」
「時々ジム・ホールは聴いているかね?」
「はい、一応聴いているのですが…」
「とりあえず一緒に何か弾いてみよう」
恥ずかしかったけれど、ぼくは抱えてきたギターで、亜波黒先生と一緒にブルースを弾いた。でも、手癖のような、何を言いたいのかよくわからない、モゴモゴしたメリハリのない演奏しかできなかった。
「なるほどわかった!」と亜波黒先生。
「素晴らしい薬を出しておく。これは出たばかりの薬でね、しかも強力だ。絶対に効く」
薬はこれだった。
先生の処方に従い、ぼくはこのCDを何度も何度も聴いた。一日中聴いた。寝ている時も聴いた。この薬は、本当にすごかった。ぼくのフレーズはPON PON PONになり気分は最&高。亜波黒先生どうもありがとう。みんなもアドリブがうまく行かないならこの薬を試すと良いと心から思った。