2015年8月21日、モーション・ブルー・ヨコハマでジェシ・ヴァン・ルーラーのライブを観てきました。
今回は55 Recordsから今春リリースされたばかりの Phantom (The Music of Joe Henderson) ツアーとして来日。大阪・名古屋・静岡・東京でも公演があったようです。55 Recordsは海外ジャズミュージシャンの信頼が厚い有名な日本のインディーズレーベルで、このCDはiTunesでの配信はありません。
この人はとにかくギターが上手です。ただ「ギターが上手」とは言っても、ギター独特の奏法を強調する「ギター野郎」という意味ではなく、楽器をコントロールしている感じがすごい。圧倒的なテクニックの持ち主ですが、勿論、テクニックで圧倒するわけでもありません(説明が難しい)。
具体的には音量・ダイナミクスのコントロールが唯一無二。ピアニッシモでも超丁寧な速いパッセージを弾いたり、コードのバランスも素晴らしい。とにかくコントロールしている感じ。フルアコを弾いている方ならたぶん誰もが「ボリュームポットに触れていないのに?」と思ったのではないでしょうか。
そして余裕がありました。勿論かなり集中していて熱くなるところも見せるのですが、リズムも音色もアーティキュレーションも淀みなくコントロールされていました。頭のトレーニングとして、あれを何かに例えてみたいと思います。
超高性能な蛇口から、いつも絶妙な量の水が流れている
というのはどうでしょう。悪くない比喩かなと思います(自分で言うな)。私もジェシのような超高性能な蛇口になりたいです。今後は水量を調節する蛇口になったつもりでギターを弾きたいと思います。ヒントをくれたジェシ、どうもありがとう!
楽器の扱いがうまい、という点ではもう一人思い浮かぶのがジュリアン・ラージです。ジュリアン・ラージの場合は楽器のコントロールがうまいというか、もはやコントロールさえしていないような気がしますが、ラージが天使だとしたらジェシにはもう少し人間臭いところがある。そこが彼の魅力でしょうか。
今回の使用ギターはGibson ES-150DC。”Phantom” のジャケット(写真上)にも写っているギターで、これは335(というか330)をそのまま厚胴のフルアコにしたようなモデル。ネックジョイントが高い位置にあるのでセミアコの演奏性があり、音色はフルアコ。現在のジェシのスタイルにはぴったりな感じですね。
ES-150DCはあまり市場に出回らないのか、私は楽器店で見かけたことがなく所有している友人もいないのですが、いつか弾いてみたいと思いました。不思議なギターですね。1969年から5年間だけ生産された珍しいギターのようです。
多分ダイナミクスレンジの広い演奏が前提だからでしょうか、ジェシは気を使ってか音量やや控えめで弾いていたような気がしました。また時々フィードバック音が発生していた(アンプはフェンダーのツインリバーブ系)ような気もしますが、勿論音楽的には何の影響もありませんでした。
曲目はジェシのオリジナルも演奏されましたが、ほとんど “Phantom” 収録のジョー・ヘンダーソンのナンバー。4度堆積やクラスターボイシングが正確に繰り出されて本当に素晴らしかったです。昔は貴公子と呼ばれていたジェシ、今ではカッコいいオヤジという感じに仕上がっています。笑顔が素敵でした!