現在その演奏が古今の有名プレーヤーに「酷似」しているとされ話題になっているギタリストが、報道陣の質問に回答した。以下はその一問一答。
先日のジャム・セッションであなたは30コーラスもソロを取りました。大変迷惑だったようですが、それはそれとして、うち8コーラスが他人のソロに酷似していたという指摘が相次いでいます。その点についてご説明お願いします。
ジャズ・インプロヴィゼーションはリアルタイムの作曲活動で、その時その時に聞こえたもの・思いついたアイデアをベースにメロディを組み立てていきます。聞こえたメロディの断片や、試してみたくなったアイデアが、過去の優れたプレイヤーに由来していても何らおかしなことではありません。
ある部分など、テーマメロディを180度上下反転して短3度上で弾いていただけという指摘もあります。これはどう釈明しますか。
転回形のことでしょうか。バッハもよく使うごく普通の技法です。ただしフォトショップで画像を反転させるよりは難しいんですよ! かなり集中が必要なんですよ! リズムだってずらしているんです!
12コーラス目にウェス・モンゴメリーと寸分違わぬフレーズが出たとされています。ご遺族またはマイルス・デイヴィスの許可は得ているのですか?
あれはもはやフリー素材というかパブリック・ドメインに属するものと考えています。その上で心からのレスペクトとともに使用させていただきました。あと何故マイルスの名前が出てくるのですか?
曲中、コルトレーン・チェンジをトレースしようとした疑惑もあるようですが?
トレース? スーパーインポーズのことでしょうか? あれはチャレンジしましたが、完全な失敗でした。その点はどうもすみませんでした。胴体の部分はうまく行ったのですが・・・
ドミナントのD7上で、b13のBbに続いて通常アヴォイドのC#を弾きました。カート・ローゼンウィンケルの有名なシンメトリック・オーグメント・フレーズをパクろうとしましたね?
いえ、あれは単に間違っただけです。いいがかりはやめてください!
それでもあなたはご自分の演奏には著作権があると主張されるのですね?
そんな主張していません。
あまり反省している様子が見られないのですが?
反省していないからです。
あなたの過去の演奏も同様にパクリだったのではないかという指摘があります。
そりゃ過去はもっともっとパク・・・他人のフレーズを積極的に取り入れていたと思います。とても勉強になりましたよ!
あなたはジャズ・プレイヤーとしての誇りを持って演奏しないのですか? ジャズ・プレイヤーとしての矜持はないのですか?
私は自分にとってサウンド・グッドなものを弾いているだけです。誇りとか矜持とかどうでも良いです。ちっぽけな自分よりも、良いメロディーのほうが大事です。それがどのように発生したものであれ。
コンディミの安易かつ機械的なパターンが度々聞かれました。あれは手抜きではないのですか?
あれは私の指たちが勝手にやったことです。ただ、監修者としての管理責任があるのは認めます。現在事実関係を調査中です。
単に他人のフレーズを真似るどころか、大幅な改造を加え、あたかも自分が開発したフレーズであるかのように何の恥じらいもなく弾いていることもあるように思いました。
それは褒めているんでしょうか?
他にもパット・メセニーの丸パクリフレーズも聞かれました。恥ずかしくないのですか。
メセニーだってウェスをコピーしていた時代があるんです。彼はライブハウスでそればかりを演奏していた時期さえあるんです。彼はその果てに自分の世界に辿り着いたんです。わ、私だって、私だっていつか・・・ ウッ
あなたはこういうフレーズを弾いていましたね?
はい弾きました。だから何だと言うんですか! 美しいじゃないですか! それにこれだけのミュージシャンが、それを美しいと思って弾いているんです!私はね、昨夜寝てないんですよ!
最後の質問です。あなたがやっていることと現在疑惑のデザイナーがやっていることは、同じようなものですね?
違います。私がやろうとしていることは、ジャズの伝統と自分自身の内なる歌を融合させることです。そして私自身の内なる歌は、ジャズを含む様々な既存の音楽に由来しています。
ですから私は自分の演奏に著作権を主張したりしません。私は一種の媒体に過ぎません。音楽は、私の身体を風のように通り過ぎていきます。その風が何処から来たのか、何処に行くのかわからないこともあります。ジャズを愛する者にとって、自分の名前など取るに足らないものなのです。
音楽が、メロディが、生き残っていってくれれば、風のように吹き続けてくれさえすれば、私はそれで満足なのです・・・