少し前にギブソンがCEOを募集していて話題になりましたが、新CEO、決定したようです(英文詳細)。ジーンズメーカー・リーバイスでブランド責任者を努めていたジェムズ”JC”カーレイという人物が今後同社の舵を取っていくことになります。下の写真を見ると、もうギブソンのTシャツ着ちゃってます(笑)。カッコいい人ですね。

James “JC” Curleigh, image from Gibson official site
リーバイスといえばいかにもアメリカな感じがするブランドだし、カーレイ氏の外見も音楽産業とは相性が良いように見えます。今後ギブソン社はカーレイ氏の方針の下で経営を立て直すことはできるのか。
カーレイ氏がどのような経営戦略を以ってギブソンの再建にのぞむかについては、まだ情報は何もありません。とはいえ少し気になるのが、リーバイスという企業がもはやアメリカ合衆国本土に工場を持っておらず、すべての製品が中国のようなコストの安い国に生産をアウトソースされているらしい点です。
かりに同じ方向性が取られるなら、ギブソンのギターは米国ではなく、エピフォン等のラインを手がける中国の青島工場で生産されることでしょう。北米でアーチトップ職人を大量解雇していることなどを考えると、これは現実味のあるシナリオのように思えます。
でもそうすると、ギブソンの廉価版という位置づけのエピフォンブランドとカニバリズムを起こすことになり、ギブソンブランドをどう差別化するのかがよく見えてきません。
海外掲示板Redditでもこの件について議論が行われていますが、興味深い会話を見つけたのでご紹介。
- この男のことはあまりよく知らないけど、これはギブソンにとっていいことなのかどうか… ギブソンがいま必要としているのは、ノスタルジーをそそるようなブランド(a nostalgia brand)の経営が前職だった人間ではないのではないか。
- そうは思わない。ギブソンはノスタルジア・ブランドだよ。ギブソンが必要としているのはまさにそれだ。イーサネット搭載ギターのようなギミックに注力するのではなく、いちばん得意なことに注力する会社に戻すような人間が必要なんだ。人々がギブソンを買うのは、時代を超えた、クラシックな楽器が欲しいからだよ。
ノスタルジア・ブランドであるリーバイ・ストラウスの社長がギブソンのCEOに、と考えると、ある種の安心感はあります。それと同時に、リーバイスがもはや北米で生産されていないことを考えるとビミョーに不安な気分にも。
いや、待って。だからこそこの人に白羽の矢が立ったのか。
タイムレスな価値を持ったクラシックな楽器を提供するというギブソンのコア・バリューを維持しつつ、これまでよりもコストエフェクティブな環境で製品を開発・製造していくというミッション。これは誰がやっても難しい仕事ではないかと思います。同時に、やりがいもありそうな気がします。クリエイティブな仕事ですよね。
伝統を維持しつつ、革新も少しは取り入れていかないといけないでしょう。でもフェンダーみたいにネットワーク対応型のアンプを作る、みたいな方向性を真似しても仕方ないだろうし、かといってレスポール・スタンダードとES-175だけ作っていても明るい未来はなさそう。これは難題だと思いますが、個人的にはそんなに悪くない人選かな、という気がしました。皆さんはどう思われましたか。