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ギタリストはチューナーを使って6本の弦を1本1本合わせないといけないの?

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朝起きてすぐ、でも、帰ってきてから、でもいいですが、チューナーを使ってギターをチューニングするとします。それは大切なことだ。私達はそのように教えられます。それは、基本だ。マナーだ。そういう思い込みを私達は持っていて、弾く前にちゃんとチューニングする。多くの場合、チューナーを使って。

チューナー

これは悪いことでも何でもないでしょう。チューナーを使ったチューニングは、間違いのない、確実な方法の1つと言えるでしょう。

チューナー

でも個人的に、そのことに微妙な違和感を持っていました。チューニングという行為自体は、必要不可欠だとは思うのです。でもチューニングを、チューナーのLEDの光や針によって、視覚的に確認していくという行為に、それが客観的で多くの人に迷惑をかけない便利なソリューションであることは間違いないとはいえ、ビッミョーに何か違うんじゃないか、というモヤモヤとした疑問を、感じていたのでした。

最近、ジュリアン・ラージがチューニングについてこんなことを語っているのを知って、ちょっと共感しました(原文を読みたい方は、John Zorn Arcana VIII: Musicians on Musicで読むことができます。ジュリアン・ラージがかなり興味深いエッセイを寄稿しています)。

僕は何年もチューナーにべったり頼って生きてきた。そしてチューナーが、お前の音は合っていると言ってくれたら、それを疑うことはなかった。

ある水準では、イントネーションというのはホーン・プレイヤーやヴァイオリニスト、シンガーが取り組まないといけない問題だと思っていた。チューナーを使ったギターというのは、そういうことから免れていると思っていた。

最近になって僕は、ある特定の音に、チューナーを使わずにそれに合わせられるかを試すようになった。驚くべきことに、僕はイントネーションを貧弱にしか理解していないことを悟ることになった。一般的な意味だけでなく、自分が使う特定のギターそれぞれについて。…

疲れている時、僕はフラット気味にチューニングするかもしれないし、コーヒーを飲んだら1弦のEはシャープ気味になる。こういうのはとてもパーソナルで、こういう好みを積極的に受け入れたほうが、いい結果をもたらすことがあるようだ。

僕は完全には音が合っていないことが多くある、だがその良い点は、僕がその楽器のことを学びはじめているということ、そしてその楽器が最高の鳴りで響くために、何が必要なのかを学びはじめているということだ。

ジュリアン・ラージはこの短い文章に、「1ヶ月のあいだ、チューナーを捨ててみる」というタイトルを付しています。これを読んでから、私も試しています。朝起きてすぐにチューニングとか、しない。何かと合わせて弾いていておかしいと思ったら、とりあえずA弦だけ合わせる。残りの弦は、耳でやる。

音叉

合奏者がいるなら、チューナーで合わせないとダメだよ、という方もいるかもしれません。そういう考えも、あるかもしれない。でもそうじゃない考えも、あっていいような気もします。

ひどい風邪をひいて、すごい熱が出ると、聴覚が無茶苦茶になるのを感じたことがある方は少なくないでしょう。もう音楽できないんじゃないか、と不安になるくらい、半音近く音が上下して聞こえることがあるじゃないですか(そのくらいひどい風邪は10年に1回くらいかもしれないですが…)。

主観を大事にしないといけない、という単純な話ではないと思うんですね。他人と合奏する以上、落としどころは見つけないといけない。でもその落としどころを、チューナーに見つけさせるのか、自分で決めるのか。このギターをどうチューニングするかを、チューナーに決めさせるのか。自分で決めるのか。そういう話だと思います。

チューナー

自分で「このチューニングでいい」と思ったら、最終的にはそれでいいんじゃないかと最近思います。たとえそれがチューナーで測った時に、メモリ0.5個分シャープだったりフラットだったりしても、ある程度の時間の中での演奏は、その程度の音程の上下の違いは、弦の押さえ方によって吸収できそうな気もします。というか、それが正解じゃないのかな、と。

チューナー

こんなことを書くと、音楽学校の先生に怒られそうではあります。けしからん、と。ちゃんと合わせろ、と。でもその「ちゃんと」って、何だろう、という話です。基準音は、絶対要るとは思いますが、そこから離れた音をどう調弦していくかは、やっぱり幅があるんじゃないか。

ジャズ・レジェンドたちの演奏を、スローで再生して音を拾っていく時、それはソフトウェアのスロー処理上の問題もちょっとはあるかもしれないけれど、音程がビッミョーなことが結構あるんですよね。それは、ノーマルスピードで聴いた時は何の違和感もなかったりする。でもスローで聴くと、採譜が半音間違ってしまうくらい音痴に感じることもある。

わりと揺れがあると思います。そして、その「揺れ」はリアルな何かの1つではないか。


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