ジュリアン・ラージがマスタークラスのレッスンで手渡している資料に「ギターについての12の考察」という彼自身による素晴らしいエッセイがあるのですが、その中で彼はこんなことを書いています。
ソロギターを弾くというのは、自分の人生で長いあいだ避けてきたことだった。それは上級者のためのものだと信じこんでいたからだ。もしあなたがまだソロギターをはじめていないなら、今日からやろう。それはどんなレベルのプレイヤーにも開かれているものだ。これはごく初歩的で自明なことのように聞こえるかもしれないが、ギターの生徒でソロギターを弾いている人、弾けると思っている人があまりに少なくて、よく驚かされる。ソロギターでは、サポートを得られていないような、何かを忘れているような感じになったり、もっとテクニックがないといけないと思わされる。
僕たちはある意味では常にソロをやっている、合奏で仲間がいる時でも。そして逆説的ではあるけれど、僕たちは決して独りになることはない、自分だけで演奏している時であっても。
うん、だからソロギターは難しいに違いにないからやったことない、という人は、今日からはじめてみても良いんじゃないか。私もジュリアン・ラージと同じように感じていたことがあります。ソロギターは難しい。自分にはまだ早い。いったいいつになることやら…
でも、ソロギターに取り組むようになって思ったのは、やはりどんなレベルでもソロギターは可能だということ。そしてソロギターの練習を通じて、私はものすごく伸びた!(※当社比)
ソロギター、難しいけれど、それ以上に楽しい。「弾けないと…」が「弾きたい…!」に変わったらチャンス。音楽性は深まり、理論も身につき、指もよく動くようになって、リズム感も良くなる。いきなりジョー・パスの”Virtuoso”を目指す必要はなくて、テーマのメロディとルートだけでスタートするのも良し。いや、最初はもうシングルラインだけでもいいかもしれない。どんなソロギターを弾くかは、自分で決める。
でも少しは取っ掛かりが欲しい、とか、憧れのジャズギタリストたちがソロギターで使っている「よくある表現」みたいなものが気になる、知りたい、身につけたい、という方もいると思います。そういう方には、下の3冊は参考になるんじゃないかと思います。
この3冊についてはちょうど1年前に下のリンク先の記事で詳しく書いてみたことがあります。というか下の記事を書いたことを忘れていてこの記事を書きはじめていた…いよいよボケが来たか。いや、ボケが来たとか、そういうことではないのだ。何回も同じことをやる。やったら忘れて、また戻ってきて、やる。その繰り返しで人は進歩するのだ…
そしてこれらの本でいろんなスタイルや語彙を楽しみつつ学んだあとに、一度全部忘れてしまって、上で書いたようにメロディとルートだけでシンプルにはじめてみるのも良いと思います。そして少しづつ音を増やしていく。自分はこの曲を、どう弾きたいのか。鈴木氏のバージョン、小沼氏のバージョン、菅野氏のバージョン、どれもカッコいい。じゃあ自分はどう弾くか。自分バージョンはどんな感じになるんだろう…
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いま上の3冊をamazonで見てみたら、鈴木よしひさ氏の著書のレビューに面白いことが書かれていました。「この楽譜のまま(人前で)弾くには、よほどリズムの良い方でないと間が持たないような、さびしいような感じの部分が結構あります。逆にそれがここもうすこしベース入れようとか、和音加えようとかになるんですけど…」というコメント。
それは私も同じように感じました、ただ私の場合はそれによってこの本の評価はマイナスにはならず、ソロギターの難しさと面白さをあらためて感じることになり、感動した部分でした。このシンプルなアレンジで、独りでこのリズムでやれないといけないのか、と。模範演奏CDは最高です。そして、リットーミュージックさん!小沼さんの著書、品切れじゃないですか!すぐ増刷しないと!(笑)
ソロギターで弾ける曲のレパートリーを増やしていくことはとても大事なことだなと感じています。イントロ。テーマ。アドリブ1〜2コーラス。後テーマ、エンディング。短くてもいいし、華麗な超絶技巧がなくても、いいと思うんですよね。独りでやれないといけない。そして、独りでやっていても、自分以外の存在をそこに感じないといけない。ソロギターは本当に勉強になります。
もしまだソロギターをはじめていないなら、今日からやろう。
– Julian Lage