練習することの意味や効果的な練習方法について、1年前にTEDからこんな動画が出ていたようです。このブログでも何年にもわたりこのテーマを考察してきましたが、この5分弱の動画を見たらかなりスッキリしました。ありがたいことに、日本語字幕付きです。
文字でまとめると大体こんな内容です。
- マッスルメモリーというものはない
- 索軸(axons)と呼ばれる神経線維を覆うミエリン(myelin)と呼ばれる脂質が練習によって厚みを増す
- ミエリンは電線の絶縁体のような機能を果たし、電気信号の伝達効率を高める
- 一度習得したスキルは、以後、その行為を想像するだけで練習効果がある
- あるスキルに熟達するために、ある程度の量の練習時間は必要だが、質も問われる
- 良い練習とは、一貫性があり、集中の中で行われ、能力の限界値をあげようとしたり弱点を改善しようとするものである
- 速く弾けるようになるためにはゆっくり弾く練習が必要である
特に「マッスルにメモリーはない」という考え方は興味深いです。まだ研究段階でこの動画の説が完全に正しいというわけでもないようですが、個人的にはかなり納得できる内容でした。
うーん、すると特定の指が動きにくいというのは、「指が弱い」のではなく、その指を動かすための索軸を覆うミエリンが薄い、と言うのが正しいのでしょうか。
ところでこの「ミエリン」という耳慣れない言葉をあらためて調べてみました。
神経科学において髄鞘 (ずいしょう、myelin sheath) は、脊椎動物の多くのニューロンの軸索の周りに存在する絶縁性のリン脂質の層を指す。 ミエリン鞘とも言う。コレステロールの豊富な絶縁性の髄鞘で軸索が覆われる[1]ことにより神経パルスの電導を高速にする機能がある。Wikipedia
下の図の右側に”myelin sheath”と”axon”の図があります。水色の被覆のようなものがミエリン。なるほどこれは…完全に電線ですw
あと面白いのは「想像すれば練習したことになる」というもの。これは確か「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」という脳科学の本で読んだ気がします。例えば既にギターが弾ける人の場合、ギターを弾く他の誰かの手を動きを観察したり、音楽を聴いてそれを自分が弾くつもりで運指をイメージするだけで練習効果があるのだそうです。
50歳60歳になった超一流のプレイヤーが、練習は1日30分くらいしかしないよ、音楽は色々聴いているけどね…などとよく口にしていますが、きっと「想像」している時間は多いのではないかと推測したりします。
「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」は面白い本でした。Kindle版も出ているので興味のある方にはおすすめです。
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Kindleといえば防水機能付きのものが出るようです。これで修行中に滝に打たれながら脳科学の本を読むことができます。
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ところで「気合を入れて練習する」という言い方があります。あの「気合を入れる」というのは、一体どんな意味なんでしょうか。電気の出力上げるという意味でしょうか。あるいは昇圧するということなのか。電気信号の伝達効率とはまた別に、「発電」の部分にもまだ解明されていない事象がきっとたくさんあるんでしょうね。