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ジャズ系ギタリストに人気の弦セットのテンションを比較する

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弦は太ければ太いほど良い音がする、と言われる一方で、太い弦はテンション(張力)が高く、押さえるのに力がいる、と言われます。また同じゲージ(太さ)でもメーカーによってテンションが異なるという話があります。有名なのは「トマスティックの弦は太くてもテンションが低くて押さえやすい」という話。へーそうなんだ、と何となく納得していましたが、それは本当なのか。

というわけで実際に数字を集めて、比較してみることにしました。

今回調べてみたメーカーはダダリオ・エリクサー・トマスティックの3社。参考にしたサイト(数字のソース)は以下の3つです。弦セットの合計テンションは自動計算しましたが、1本1本の数字は手入力なので細かい間違いはあるかもしれません。あらかじめご了承下さい。

ダダリオの主な弦セットの合計テンション

まずダダリオの主な弦セットのテンションを見てみます。ラウンドワウンド、フラットワウンド、ハーフラウンドの順に表にしてあります。

各表の表頭にあるのは、製品名。左側の列は、どの弦か。数字の単位は、kgf(重量キログラム)です。フラット弦とハーフラウンドでは.010〜のセットは省略しました。「TOTAL」とある部分が、6本の弦の張力の合計kgfです。この数字が大きければその弦セットのテンションは高く、小さければ低いことになります。

さて…よくお店で見かける弦セットを調べてみたのですが、EJ20とEXL115だと意外なことにEJ20のほうが合計テンションが高い! 3弦と4弦がちょっと太いのかな。このことから「.010のセットは.011のセットより軽い」とは一概には言えないことがわかります。

D’addario Round Wound
EJ20(10-49) EXL115(11-49) EJ21(12-52) EJ22(13-56)
1E 7.36 8.90 10.60 12.44
2B 8.10 8.10 10.57 11.93
3G 10.73 8.43 12.71 14.86
4D 11.22 9.58 12.53 15.39
5A 9.51 9.51 11.61 13.67
6E 8.60 8.60 9.59 11.44
TOTAL 55.52 53.12 67.61 79.73

フラットワウンドのセットは、ラウンドワウンドのセットよりも合計テンションが高くなっています。プレーン弦は同じゲージならテンションは同じですが、製法が異なるフラットの巻き弦は、例えば同じ.056の6弦用でもラウンドの.056よりテンションが高いようです(EGC26の.056は12.04kgf、EJ22の.560は11.44kgf)。

D’addario Flat Wound
EGC24(11-50) EGC25(12-52) EGC26(13-56)
1E 8.90 10.60 12.44
2B 9.29 10.57 11.93
3G 11.32 13.41 15.68
4D 11.48 13.00 15.62
5A 11.47 12.18 14.33
6E 9.58 10.22 12.04
TOTAL 62.04 69.98 82.04

ラウンドワウンドとフラットワウンドの中間的な性質を持つハーフラウンドは、合計テンションも中間的になっています。ラウンド弦よりは高いけれど、フラット弦よりは低い。6弦の.056は10.62kgfで、同社のラウンド用・フラット用.056よりもテンションが低いようです。

D’addario Half Round
EHR370(11-49) EHR350(12-52) EHR360(13-56)
1E 8.90 10.60 12.44
2B 8.10 10.57 11.93
3G 8.43 14.12 16.23
4D 10.17 12.93 15.53
5A 9.50 11.20 13.32
6E 8.60 9.19 10.62
TOTAL 53.70 68.61 80.07

エリクサーの主な弦セットの合計テンション

人気のコーティング弦、エリクサーのナノウェブのテンションです。.013-はラインナップされていないので省略しました。これだけ見てもピンとこないと思いますが、後で別の比較をするために掲載しておくことにします。

Elixir Nanoweb
Light(10-46) Medium(11-49) Heavy(12-52)
1E 7.26 9.07 10.40
2B 6.80 8.16 10.40
3G 7.71 8.62 12.70
4D 8.16 9.53 12.70
5A 9.07 9.98 11.80
6E 7.71 9.07 9.98
TOTAL 46.71 54.43 67.98

トマスティックの主な弦セットの合計テンション

太いわりにテンションが低い、押さえやすい、と評判のトマスティック・インフェルト社の弦です。フラットワウンドのJazz Swing、ラウンドワウンドのJazz Bebopの2種類を表にしてみました。フラットには.010ではじまるセットがあるかわりに.014のセットはなく(※)、ラウンドは.010のセットがないかわりに.014からのセットがあります。

(※追記:トマスティックのフラットワウンドにGB114という.014〜.055のジョージ・ベンソン・モデルがあるようです)

Thomastik Jazz Swing (Flat wound)
JS110(10-44) JS111(11-47) JS112(12-50) JS113(13-53)
1E 7.80 9.00 10.30 11.70
2B 8.30 9.30 10.30 11.40
3G 8.60 9.80 11.20 12.40
4D 8.20 9.70 10.90 12.40
5A 8.20 9.20 10.30 11.30
6E 8.50 9.60 10.60 11.80
TOTAL 49.60 56.60 63.60 71.00
Thomastik Jazz Bebop (Round Wound)
BB111(11-47) BB112(12-50) BB113(13-53) BB114(14-55)
1E 9.00 10.30 11.70 14.10
2B 9.30 10.30 11.40 13.10
3G 9.30 11.00 12.10 13.60
4D 9.30 10.80 11.80 13.30
5A 8.90 10.00 11.20 12.10
6E 9.20 10.20 11.60 12.60
TOTAL 55.00 62.60 69.80 78.80

.011〜のラウンドワウンド弦のセットだけを比較した場合

さてここからが面白いところ。.011〜ではじまるラウンド弦セットだけを横並び比較してみるとどうなるでしょう。合計テンションが低いものを左から並べてみました。すると意外な結果に。.011〜の場合、一般にテンションが高いと言われているダダリオのラウンド弦が実は最も合計張力が低く、トマスティックのほうが高い。弾きやすいイメージのあるエリクサーもダダリオよりテンションが高い!

.011〜のラウンドワウンド弦セットのテンション比較
D’addario Round Wound
EXL115(11-49)
Elixir Nanoweb
Medium(11-49)
Thomastik Jazz Bebop
BB111(11-47)
1E 8.90 9.07 9.00
2B 8.10 8.16 9.30
3G 8.43 8.62 9.30
4D 9.58 9.53 9.30
5A 9.51 9.98 8.90
6E 8.60 9.07 9.20
TOTAL 53.12 54.43 55.00

.011〜ではじまるラウンド弦セットについて言えば、「トマスティックはテンション低い」という言葉が当てはまらないことがわかりました。

.011〜のフラットワウンド・ハーフラウンド弦のセットだけを比較した場合

次は同じ.011〜ですが、フラットワウンドとハーフラウンドだけで横並び比較してみます。すると…この中でハーフラウンドがいちばんテンション低いのは当然として、ここではトマスティックが軽くなっています。低音弦の太さが違うので当然といえば当然ですが、数字を見ただけでもトマスティックのほうが弾きやすそうです。JS111の1〜2弦はEGC24とほとんど変わらないのも面白い。

.011〜のフラットワウンド・ハーフラウンド弦セットのテンション比較
D’addario Half Round
EHR370(11-49)
Thomastik Jazz Swing JS111(11-47) D’addario Flat Wound
EGC24(11-50)
1E 8.90 9.00 8.90
2B 8.10 9.30 9.29
3G 8.43 9.80 11.32
4D 10.17 9.70 11.48
5A 9.50 9.20 11.47
6E 8.60 9.60 9.58
TOTAL 53.70 56.60 62.04

トマスティックの弦セットが押さえやすいと言われるのは、3弦から下の構成に秘密がありそうです。

.012〜の全種類の弦のセットを比較した場合

次にラウンド・フラット弦の区別なく、.012〜セットのテンションを横並びで見てみます。左から軽い順に並べてあります。すると…おお、ラウンドもフラットもトマスティックのセットがダダリオより軽い!まあ、これも低音弦がより細いので当然ではありますが、ほとんどの人は低音弦が太すぎて扱いに困る、という悩みを持つことが多いので、その意味でもトマスティックのパッケージは便利そうに見えます。

.012〜の全種類の弦セットのテンション比較
Thomastik BB112(12-50) Round Thomastik JS112(12-50) Flat D’addario EJ21(12-52) Round Elixir Nanoweb Heavy(12-52) D’addario EHR350(12-52) Half Round D’addario EGC25(12-52) flat
1E 10.30 10.30 10.60 10.40 10.60 10.60
2B 10.30 10.30 10.57 10.40 10.57 10.57
3G 11.00 11.20 12.71 12.70 14.12 13.41
4D 10.80 10.90 12.53 12.70 12.93 13.00
5A 10.00 10.30 11.61 11.80 11.20 12.18
6E 10.20 10.60 9.59 9.98 9.19 10.22
TOTAL 62.60 63.60 67.61 67.98 68.61 69.98

.013〜の全種類の弦のセットを比較した場合

ついでに.013〜のセットを見てみます。これもラウンド弦、フラット弦の区別なし。エリクサーは.013〜製品がなかったのでカット。うーん、なるほど、6弦が56か53かという違いはあるけれど(4,5弦も違うはず)、ダダリオのフラットワウンド弦の合計張力がいかに強いかがわかります。トマスティックのフラットワウンド、JS113の71kgfに対して、ダダリオのフラットワウンド、EGC26は82.04kgfです。

.013〜の全種類の弦セットのテンション比較
Thomastik BB113(13-53) Round Thomastik JS113(13-53) Flat D’addario EJ22(13-56) Round D’addario EHR360(13-56) Half Round D’addario EGC26(13-56) Flat
1E 11.70 11.70 12.44 12.44 12.44
2B 11.40 11.40 11.93 11.93 11.93
3G 12.10 12.40 14.86 16.23 15.68
4D 11.80 12.40 15.39 15.53 15.62
5A 11.20 11.30 13.67 13.32 14.33
6E 11.60 11.80 11.44 10.62 12.04
TOTAL 69.80 71.00 79.73 80.07 82.04

勿論、テンションが低いからと言ってその弦が優れているというわけではないでしょう。テンションが高いほど弦振動がよくギターに伝わるという人もいるし、実際にそういうギターもあるはず。テンションが低いということは、より少ない力で弦を押さえられる、ということ以外の意味はありません。でも様々な理由で、より少ない力で押さえたいケースがあるわけで、そういう場合はトマスティックの弦は有利そうです。

同じ太さの弦はメーカー・モデルによって違う?

基本的に同じメーカーの同じ太さのプレーン弦は同じテンション。同じメーカーの巻き弦は、同じ太さでもラウンドかフラットかでテンションが異なる。また同じ太さの弦でもメーカーが違えばテンションは異なる、が、プレーン弦においては極端な差は出ないという印象。フラット弦の場合は少し差が出ている模様。

下の表を見ると、プレーン弦の.011はダダリオとトマスティックでほぼ同じような数字と言えるでしょう。しかしエリクサーはコーティングという製法上の違いがあるせいかちょっとだけ高いのかな… そして.015と.050という太さの弦はエリクサーにはないので、6弦の.050(フラット弦)をトマスティックとダダリオとで比べると、結構違いがあります。しかも、なぜかトマスティックのほうがテンションが高い!

弦1本ごとのテンションの違い
Thomastik D’addario Elixir
.011(E) 9.00 8.90 9.07
.015(B) 9.3 9.29
.050(E) 10.6 9.58

ということは、トマスティックの弦セットの「テンションが低い印象」は、弦1本1本が他社製品よりもテンションが低いからではなく、3〜5弦に他社より細いゲージが使われているから、つまりバランスが工夫されているから、と言えるのでしょう。また「ダダリオのフラットワウンドは固い」と言い切ってしまうのも誤解を生みそうです。フラットの6弦、.050だけを見るとトマスティックより軽い数字なので。

調べてみて気づいたことのまとめ

  • 同じ太さのプレーン弦なら、メーカーが違ってもテンションは極端には違わない
  • 製法(プレーン・フラット・コーティング)が違うと同じ太さの弦でもテンションはだいぶ違ってくる
  • テンションが低い弦セットは、3〜6弦のゲージを落として合計テンションを低くしているらしい

調査後の感想

私自身、むかしトマスティックの弦をよく使っていました。特にフラットワウンドの.012〜のセット、JS112はフルアコでよく使いました。やはりダダリオの弦より押さえやすかった記憶があります。その後に好みが変わり、エリクサー・ナノウェブやダダリオ・ハーフラウンドの.011〜をフルアコでもセミアコでも使うことが多くなりました(フェンダースケールのギターでは.010〜を使ったりもします)。

現在愛用中のダダリオのハーフラウンド、EHR370(11-49)の合計テンションは53.7kgf。これはElixir Nanoweb Medium(11-49)の54.43kgfよりも低いんですね。どうりで弾きやすいわけだ… 参考までに、この2つの弦セットは、全ての弦が同じ太さです(.011 .014 .018 .028 .038 .049)。

弦の太さが同じなら、基本的には同じナット溝にはまってオクターブチューニングもほぼずれないので、フラット系の音とラウンドの音を気軽に切り替えられる意味でもこの2つは私にとって便利なセットです。

この記事を書いていて、トマスティックのフラット弦をまた使いたくなってきました。巻き弦の頭に赤い毛糸みたいなものがついていて、面白かったな…そういえばマイルス・オカザキはトマスティックの.014〜のフラット弦を使っているとインタビューで答えていたのですが、ぱっと調べた感じそういうセットはないので、トップだけBebopの.014〜のセットを混ぜているのかもしれません(追記:またはGB114というジョージ・ベンソン・モデルなのかも)。

各社の弦のテンションはこんな感じでネットで調べることができるので、自分好みのテンションを求めてブレンドしてみるのも面白いと思います。マイク・モレノは、メーカー不明ですが1〜3弦は.013〜のセット、4〜5弦は.011〜のセットをマルキオーネのセミアコに張っているそうです(ソース)。Gibson ES-335なら.012〜がちょうどいいが、マルキオーネはトップが.013〜が好みらしい。

ここ数年、細めの弦を使ってきているのですが、太い弦を張ったギターできっちりいい音を出す練習をやりたくなってきました。ピックギターでもいいかもしれない。マイルス・オカザキ、メアリー・ハルヴォーソンの演奏を聴いていると、なんというか「原始的ないい音」で心が揺れます。「太めのフラット弦」にちょっと回帰してみようかな…


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