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1周回ってカッコ良いと思えるもの

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1周回ってカッコ良いと思えるもの、があります。最初、それはカッコ悪かった。魅力的ではなかった。バカにされることもあった。だから、避けてきた。でも気が付くとそれらに新鮮な魅力を感じている自分が。例えば…

カウボーイ・コード

例えば、こういうコードたち。フォークやロックで多用されるオープンコード、別名カウボーイ・コード。必然性なく重ねられた音を持つトライアド。最近流行のダッドシューズのような魅力を感じます。

カウボーイ・コード

参考:ダサいダッドシューズ。これがいまカッコいい。郊外の靴流通センターなどで手に入るという。洗練を拒否する荒々しい魅力。ダイエットを拒否し今日もビールを飲み続けるお父さんのようなシューズだ!

 

V7上でのミクソリディアン

4度進行するドミナントコードの上では、オルタード・テンションを弾くのがジャズの常。ジャズっぽいサウンドを狙うにはまずオルタード、みたいなことも言われます。特に反論はしないのですが、V7上であえてオルタードテンションを弾かず、ミクソリディアンを使う。言い換えれば、ナチュラルテンションだけを使用する。奇をてらわない。ドラマを拒否する。川の流れのように… Be water, my friend.

ルートから弾きはじめる

フレーズを弾く時、例えばCm7と書かれていたらCの音からはじめる。これは最も簡単で直感的な方法である反面、退屈であるとも言われてしまいます。そればっかりやっているからうまくならないのだ。アプローチノートからはじめてみたまえ、コードなら転回系を覚えなさい! などといった小言が飛んでくることも。

しかし、そこをあえてルートから。反抗的にルートから。ルートで何が悪い。文句あるか! ドーンとルートを弾く。そしてベーシストと目があってしまったら「エヘヘ…」と照れくさく笑ってみる。

スペイン(チック・コリアの曲)

ジャムセッションで必ずと言っていいほどコールされる有名曲。ライブで客席からリクエストが入る頻度も高い。その華麗なリフを何度となく弾いているうちに「おらもうこんな曲イヤだ!」とうんざりしてしまうギタリストも少なくないという。だがこれも数年に1度は必ず「うおおーっスペイン、カッコいいわ!」と興奮する瞬間がやってくる。そんな時は静かに目を閉じ恍惚としてひたすら16分音符を弾こう。

アンプ直結リバーブゼロ

エフェクターがほしい。ほど良いリバーブがほしい。ディレイがないなんて考えられない。でないと自分の音楽にならない。そんなふうに思っていても、アンプにシールド直挿し、リバーブゼロの完全デッドなセッティングで弾くと、その化粧っ気のない音に己の真の姿を感じる。そこにあるのは、本当の自分との出会い。鏡に映し出されたその自分は、美しくとも、美しくなくとも、感動的だ。

ラリー・コリエル

ラリー・コリエルというギタリスト。ジャズにロックギター的要素を持ちこんだギタリストの1人としてファンだった方も多いはず。そしてファンの方々には申し訳ないのだが、私はこの人の音楽にはあまり魅力を感じたことがなかった。こういうふうには弾きたくないと思ってさえいた。しかしこの「枯葉」での彼のソロ(2:02-)はどうだ。完全に浮いている。ジョンスコとアバークロンビーの視線もどことなく冷たい。

でもこの演奏は、1周回ってカッコ良く思えてきました。でっかいギターを歪ませて、速く弾く。熱くなってきたら、立ち上がる。この「枯葉」は全員の演奏が素晴らしいと思うのだが、いろんな意味でコリエルが全部持っていった感じがする。

勿論、この後に順番が回ってきてしまった不幸なアバークロンビー氏もいつもの演奏ができていてカッコいい。誰もがその時その時の自分の音楽をやっているから、カッコいい。飾ることなく、剥き出しにされた己の姿。最終的に、人はそこに戻ってくるのである…


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