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#MeToo の現代から振り返るエミリー・レムラーの人生

JazzTimesが「エミリー・レムラーの盛衰」という記事を掲載しています。#MeToo とTime’s Up運動の現代から彼女の人生を振り返ってみると、レムラーの死後30年近く経った現代でも女性の立場は何も変わっていない、という内容で、彼女自身や当時のパートナー、批評家との会話、インタビューでの発言などが紹介されています。

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エミリー・レムラーは1990年5月、ツアー先のシドニーのホテルにて「心不全」で死去。心不全の原因はドラッグの濫用だったと言われています。では、ドラッグの濫用は何が原因だったのか。記事を読んでいると、それは男性中心主義社会での葛藤、女性差別と大きい関係があったのではないかと思わされます。

プレイしている時、自分が女の子なのか、犬なのか、猫なのか、他の何なのかなんてわからない。私はただ音楽を演奏しているだけ。私が女であることを気付かされるのは、ステージを降りた時です。

(1983年暮れ、カナダ・ラジオのインタビューにて)

(女性として、受け入れられるためにより多くの努力が必要だったかと聞かれて) 今でも頑張っています。まだそれを打ち負かしきれてない。冗談やめてよ。今では、私はちゃんと弾けると思われている。でも毎回毎回、自分の能力を証明しないといけないの。

(1985年5月、ジャズ著述家Julie Coryellとのインタビューにて)

彼女は最初、あまり自分に自信を持っていなかった。また彼女はとても負けず嫌い(comeptitive)な人間だった、彼女があんなに成長していった背後にはそういう駆動力があったと思う。彼女は自分の能力を超えるような演奏をして、自分に何ができるかを証明しなければならないような状況に進んで自分を追い込んでいったものだ。

(当時のパートナー、Steve Masakowski談)

彼女はパーティーライフに弱いところがあった(…) 僕たちの関係がはじまった当初、ライフスタイルは健康的なものだったよ。僕は彼女に禁煙させることに成功さえしたんだ。でもパーティー好きな連中と遊ぶようになって、物事が悪くなってしまったんだ。

(同上)

面と向かって、私が女だからという理由で雇えないと言ってきたバンドリーダーが本当にたくさんいた。本当に多くの場面で、私は音楽的に信頼されなかったし、子供用のグローブで扱われた。

私はニュージャージー出身の可愛い女の子みたいに見えるかもしれない。でも中身は50歳の、ガタイが良くて親指がデカい黒人男だから。ウェス・モンゴメリーみたいなね。

(1982年春、People誌にて)

彼女は多くの男性ミュージシャンの嫉妬を買い、恨まれたんだ。プライドの高い男たちが、この小さい女の子がいつも連中より上手く弾くのが気に入らなくて、彼女の足を引っ張っていた。

(Bob Moses、ドラマー)

(ドラッグがあると)最前列に座っている男が自分のことを嫌いかとか、どうでも良くなるの。ちょっとのあいだは女でないといけないけど、その後すぐに効く。考えられないくらいの違いがあるよ。

(批評家Gene Leesとの会話で)

エミリー・レムラー以後、女性のホーン奏者、ピアニスト、ベーシスト、ドラマーは増えてきたものの、卓越した女性ギタリストはまだ少ない、2018年現在すぐに思い浮かぶ名前はチリ出身のカミラ・メサ、カリフォルニアで活動するミミ・フォックス、メアリー・ハルヴァーソン、レニ・スターン、レムラーをヒーローと崇めるシェリル・ベイリーくらいである、と同記事は締めくくっています。

Wolf Marshallというギタリストは、著書で彼女を次のように評しています。

While certainly a great female guitarist, Emily Remler will always be remembered as a great guitarist, period.

エミリー・レムラーが偉大な女性ギタリストだったのは間違いないが、彼女はずっと1人の偉大なギタリストとして記憶されることになるだろう。以上。


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