ジャズを通じて英語を勉強するシリーズ、第1回と第2回(ここから読めます)は有名スタンダード曲の詩的な歌詞を題材にしましたが、今回は日常生活でも使える便利な表現を、楽しい歌から学んでいきましょう。何はともあれ、まずこの演奏。ピアノ、カーラ・ブレイ。歌とベース、スティーブ・スワロウ。歌詞も音楽もとってもおもしろいw
Very Very Simple (Carla Bley)
Here’s something, a very very simple melody
これはちょっとした、とてもとてもシンプルなメロディですThat Carla wrote especially for me
カーラが特に僕のために書いてくれましたShe said, “Each according to his ability.”
彼女は言いました、「各自、自分の能力に合わせるべし」And then she gave a simple song to me
そして彼女はシンプルな歌を僕にくれたのですIf I concentrate I know I can’t go wrong
集中すれば、(演奏は)間違いようがないと思いますAnd then, maybe someday
そして、たぶんいつの日かI’ll get a better song.
もっとマシな歌をもらえると思いますImage may be NSFW.
Clik here to view.
Photo by michael hoefner / CC BY-SA 3.0“Well just what kind of song would you prefer?”
(ふん、どんな歌が好みなわけよ?)Something that is difficulter.
もっと難しいものですAnd I think that I could sing a higher note.
あと僕は、もっと高い音で歌えると思います“I don’t think so.”
(そうは思えないわね)Better keep it simple,
シンプルなままにしといたほうがいいBetter keep it slow.
ゆっくりなままにしといたほうがいいVery very simple,
とてもとてもシンプルにAnd very very low.
あと、とてもとても低く、ね(ベースソロ)
“Well you’d better stick to picking on that thing
You play the bass much better than you sing”(それをピック弾きだけしてたほうがいいと思う、歌よりベースのほうがずっと上手いってば)
I had to take a chance I know, I know
一度やってみたかったんだよ、わかってるってBut can we sing one more time before we go?
でも帰る前に、もう一度一緒に歌ってもいい?Better keep it simple,
シンプルなままにしといたほうがいいBetter keep it slow.
ゆっくりなままにしといたほうがいいVery very simple,
とてもとてもシンプルにAnd very very low.
あと、とてもとても低く、ね
“You’d better keep it simple.”
この曲の歌詞でいちばん面白いフレーズ、日常生活でも使えるフレーズは何と言ってもサビの”Better keep it simple”のあたりです。この”Better”は元々”You had better”で、〜したほうがいいって。という提案・アドバイス。この省略形が”You’d better”。さらに省略して”Better”から始めています。意味は「シンプルなままにしておいたほうがいい」。”Better”のすぐ後ろには動詞が続きます。
“Keep it simple”のkeepは「維持する」という意味。ここではKeep A Bという構文で、「AをBの状態に保つ」。Aには名詞が入り、Bには形容詞などが入ります。
ジャズのフレーズを耳コピーして自分の演奏に取り入れる時、自分なりに一部分を改造して演奏で使うと覚えるのが早くなりますが、それは外国語の習得でも同じ。例えばこの”You’d better keep it xxxx.”というフレーズを使って、「xxxx」の箇所に自分が知っている様々な形容詞を入れてみるといい練習になります。
You’d better keep it fast.
You’d better keep it silent.
You’d better keep it cool.
等々、いっぱいフレーズができますね。Keepの代わりに他の動詞を使うのもいいですね。”You’d better play it soft”とか。あるいはもっと短く、動詞だけ入れる。”You’d better sing. “や”You’d better play.”のような短いフレーズをたくさん言えるようにするといいことがあるのは楽器と同じですね。
Difficulter?
ところで”difficulter”という聞き慣れない単語が出てきています。difficultの比較級はmore difficultと言うのが普通ですが、ここではリズムの問題から、あと冗談っぽくしたいのもあるのか、わざとこのヘンな言葉を使っている感じがします。
身の丈に合った表現をする
上で「各自、自分の能力に合わせるべし」と訳してみた”Each according to his ability.”という部分ですが、別の言い方をすると「身の丈に合ったことをすべし」でしょうか。これは音楽をやる上でも良い教訓になる言葉だと思います。リスクを取って冒険することが必要な時もあるとしても、自分のコントロールできる範囲の中で確実にいい表現をするのはやはり大事なことではないか。
音楽にしても、言語にしても、自分でもよくわかっていないような難しいことをやったり言ったりするよりも、シンプルなものをゆっくりやったほうがいい。というメッセージが伝わってくる歌ですね。Yes, better keep it that way. (そういうふうにしたほうが、いいね)。
この”Very Very Simple”という曲は、カーラ・ブレイの”I hate to sing”というアルバムにも入っています。そちらは歌詞が若干違っていて、細かい言葉遣いはアドリブでやっているのがわかり、面白いですよ。是非聴いてみて下さい。Amazon Music Unlimitedにあります。