昨年8月22日に亡くなったジョン・アバークロンビーのギターのリペアを務めていたニューヨークのThe Guitar Specialist, Inc.によると、氏はかなり低い弦高を好んだそうです。さらに彼のギターのフレットには特殊な加工が施されていたようです。
ジョンのギターには独特な「精密フレット加工」を施しています。彼はかなり低い弦高で弾きます。通常のギターは3/64″から5/64″。ジョンは1.5/64〜2/64という設定を好みます(平均的なギタリストにとっては馬鹿げているほど低い設定ですが、ジョンは平均的なギタリストではありません)。
私達が彼のMcCurdyアーチトップに施したのは、ジョンの他のギター同様、フレット高が指板を上るにつれ次第に低くなっていくような加工です。指板を上るにつれ、4フレットか5フレット毎に約1/1000インチ低くなります。簡単な仕事ではありませんが、ジョンのためです、彼がこれを弾く時に微笑むのを見ると報われた気がしました。
インチ。インチか。私はインチとマイルというやつが憎い。すぐに想像できないからです。でも大人しくミリに換算してみます。下表のいちばん右側が丸めた数字です。一般的なギタリストが1弦側1.2mm、6弦側2mmという感じでしょうか。日本だと1.5mm〜2mmという数字をよく耳にします。
inch | mm | 大体 |
3/64 | 1.191 | 1.19mm |
5/64 | 1.984 | 1.99mm |
1.5/64 | 0.595 | 0.6mm |
2/64 | 0.794 | 0.8mm |
ジョン・アバークロンビーは1弦0.6mm、6弦0.8mm。低いですね。これは彼独特のあのレガート奏法と関係があるように思われます。
ジョンは2台のMcCurdyアーチトップを診てくれないかと聞いてきました。曰く、それらのギターは誰に頼んでも彼の好みには仕上がらなかったのだそうです。私達は、ジョンの問題は、誰も彼のプレイスタイルを本当に理解するために時間をかけなかったことにあると気付きました。…そこで私は彼の家に行き、座って演奏をしてもらって数時間話し合った結果、何をすべきかを特定できたのです。
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なるほど、パット・マルティーノとジョン・アバークロンビーだと理想的なフレットの高さや仕上げは全く違うだろうな、と思います。フレットをだんだんと低くしていくアイデアはこの時に得られたものなのでしょう。1度弾いてみたい気がします。素晴らしいリペアマンさんですね。
楽器自体は当然として、こういう細部も時々見つめ直したいですね。