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私が研究しているのは音楽よりも魔術に近い - Pat Martino

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パット・マルティーノという人が何を考えているのか、今でもよくわからないことが多いです。多くの方々と同じように私もマルティーノのギターに夢中になった時期があり、コピーして雑誌で彼のインタビューを読みまくり、ライブに行ったり教則動画を何度も観たりしました。いつも思うのは、彼はものすごい確信とともに自らの思想を断言するのですが、何を意味しているのかわからないことが多いということです。

Pat Martino at Bluenote Tokyo

 
微妙にわからないこと、謎めいていることが多いのです。しかしマルティーノ氏は一切の迷いなく繰り返し同じことを口にされているので、何か大きい意味があるのだろうと思ってきました。例えばPremier Guitarでの今年1月のインタビューで、彼はギターと魔術(magic)についての関係を次のように語っています。

…がその前に「マトリックス」という日本語に適切な訳語がない言葉の意味を最初に紹介しておきます。

数や記号や式などを行と列に沿って矩形状に配列したもの 行列 – Wikipedia

本来は「子宮」を意味するラテン語(< Mater母+ix)に由来するMatrixの音写で(英語では「メイトリクス」)、そこから何かを生み出すものを意味する マトリックス – Wikipedia

ではインタビューの一部をどうぞ。

ほとんどのギタリストはスケールやモードを使ってピアノ的に学んできたが、私はそのようには学ばなかった。私は今と全く同じやり方でギターを学んでいる、つまりマトリックスに吹き込まれた魔法(the magic that’s imbued in the matrix)から学んでいる。ギターは1つのマトリックスなんだ、そこで発生するいくつかの事象は、多くの場合、ギタリストは決して研究しないものなのだけれどね。

(訳注:ここでマルティーノ氏は、4弦ルートのFdim7を同じシェイプのまま5弦ルートに移動するとCm7(b5)になり、6弦ルートに移動するとG7(b5)になるという事例を説明しています)

生徒が私のところにやってきても、私は音楽は教えない。私は音楽教師ではないからね。私は彼らに、私がどのように機能しているか観察する機会を与え、これらの定型的なパターン(formulas)をシェアする。彼らが生産的なインタラクションに到達できることを祈りつつね。私はルートや3度、5度、7度やその変位音の話はしない。私はこの楽器(ギター)の魔術について、いかにあらゆるものが、一切の音楽性とは無関係に、自動的に変換するかについて話すんだ。

オーグメント・トライアドという現象には両面がある、コインに表と裏があるように。この現象にはメジャーとマイナーが、陽と陰がある。これは音楽の研究というよりも、反対のものについての研究なんだ。音楽は普遍的な言語として使われているにすぎない、だから生徒が私のところにやってくる時、私が最初に伝えるのは、私は音楽家ではないということなんだ。私はギターの魔法を研究している。これは音楽というよりも魔術に近い。

パット・マルティーノは近年、ギターを「おもちゃ」(a toy)と呼ぶことが増えています。これもまた興味深いものがあります。人はおもちゃの使い方、遊び方を教えてもらうのか、という話になると思うのですが、どうもマルティーノは赤ん坊がおもちゃで遊んで独自の発見をするようにギターのメカニズムを学んできたように思われます。このおもちゃは、こうやればこう動く。それを知るのに、音楽教師は要らない。

幾何学的に全く同じシェイプを、指板上で縦方向に、あるいは横方向に動かした時に何が起こるか。そういう試行錯誤は赤ん坊がオモチャで遊ぶのに近く、そこから得られる発見と驚きは、昔も今もマルティーノ氏にとって魔術じみたものなのでしょう。

このあいだ久々にギターを片手にマルティーノの名演を聴いている時、Key Amの”Impressions”で唐突にA Locrianが聴こえてきて驚きました。それは勿論、A Dorianを短3度ずらした世界としてのA Locrianだったのでした…


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