ラーゲ・ルンドがタイの方とのインタビューに応じている動画を発見しました。公開日は2015年10月なので2〜3年前の録画でしょうか。
ラーゲ・ルンドはやんちゃなスケボー少年だったようです。言われてみればスケボー、似合いそうです。
13か14歳の頃にギターを始めたんだ。大体ロックを弾いていたよ。僕はスケートボーダーだったんだけど、ノルウェーの冬はかなり長いから冬のあいだにやることが欲しかったんだ。スケボーのビデオで流れているような音楽、カリフォルニアっぽいパンクとかを弾いていて、そのうちジャズも聴くようになったんだ。
約24分にもなるロング・インタビューですが、個人的に興味深いと思ったラーゲの発言を抄訳でピックアップしてみます。
- バークリーとジュリアードは奨学金を得て行くことができた
- 主な影響源としてすぐに名前が挙がるのはパド・パウエル、ジャンゴ・ラインハルト、ジム・ホール、ポール・デズモンド、キース・ジャレット、モンク、コルトレーン、マイルス、ルイ・アームストロング
- 練習ルーティンは状況によって変わるが、小さい特定のテーマを短い時間やるようにしている(2時間練習できる時なら20分間に何か1つのテーマ、等)
- メトロノームは速く鳴らすとそれに頼ってしまい、タイムに責任を持たなくなってしまうので低速でやるようにしている(超アップテンポの場合は4小節に1クリック等)
- 空間を意識したプレイをするには、フレーズの長さを意識した練習をすると良い
- バンドで演奏する時は、あれをやろう、これをやろうといったアイディアはあらかじめ持たないようにしている。よく聴いて反応する
- スタンダードのような曲はいくつかの録音を繰り返し聴いて覚える。メロディはどうか、それに対するベースノートはどうかをよく聴く。リアルブックだけで覚えるのは間違っている
- アッパーストラクチャートライアドは木の枝のようなイメージ。その枝は木に対してどう響くかをよく聴く。1度に1つのトライアドを取り出してサウンドを評価してみる
- コンピングで最も重要なのはリズムである。ボイシングやファンシーなコードではない。リズムのボキャブラリーを増やすべき。あとはボイスリーディング
- 必ずそう弾くわけでないとしても、スタート地点として最小の音移動で動くボイスリーディングを学ぶことは大事だ
- 動画中のギターは1958年製のGibson ES-350。買って1年くらいの初めてのヴィンテージ・ギター。ヴィンテージに興味はなかったがブルックリンの楽器店で弾いてみたら、これ買わないとダメだ、となった
- ES-350は柔らかいトーンでありながら、前に出る音だ。ES-175やL5のような大きいギターをよく使ってきたが、ES-335のような前に出る音も好きだった。その両者を行ったり来たりしているが、ES-350は中間の魅力がある
- ドイツのルシアー、ステファン・ショットミュラー(Stefan Schottmueller)のセミアコも使っている。それをベースに新しいギターを開発中
- エフェクターは家にいろいろあるが、ツアーではリバーブ・ディレイ兼用の安いペダルくらいしか使わない。あとチューナーとボリュームペダル
- (注目している新しいジャズギタリストはと聞かれて)NYに住んでいるからマイク・モレノやリオネル・ルエケ、ギラッド・ヘクセルマンなど素晴らしい人がたくさんいて一緒にいろいろやっているよ
- ギタリストはボリュームにもっと注意すべきだ。音がでかすぎることが多い
- トランペット奏者のようにシングルラインしか練習しないギタリストも多い。コードは二の次、という感じで。ギターではシングルライン以外にも多くのことができるんだ
ラーゲ・ルンドの演奏は結果的に複雑なことをやっているようにも思えますが、練習時は小さいひとつのことに集中し、とにかくリズムを重視する、ギグではバンドの音をよく聴く、といった当たり前で地道な内容が語られているところが印象的でした。ギターも柔らかいトーンと埋もれない輪郭を持ったものを理想としているらしい点が面白かったです。
あと、楽器店でたまたま見かけたヴィンテージ・ギターは弾かないほうが良いと思いました(笑)。
そうそう、Jazz Guitar Forumにラーゲ・ルンドのスレッドがあるので、ラーゲファンの方、是非遊びに来てみてください。面白い情報がありますよ!