世の中には意味がよくわからないものの、普通に使われている言葉が多数存在します。
むかし調子の悪くなったギターを診てもらいにショップに持っていったことがありました。デッドポイントなのか、サステインが伸びない箇所があって、その相談に行ったのでした。
すると店員さんがこう聞きました。
それ、出音で?
この時、私はかなり狼狽したのを覚えています。店員さんの口調は、「出音」(でおと)とは世界中の誰もが理解・駆使できて当然の言葉であって、お前も知っているよな、という感じだったのです。そして気付いたのです。俺はこの言葉の意味を理解していないのだ、と…。
何か間違った回答をしたら手錠をハメられ別室に連れて行かれたり、国によってはその場で撃たれても文句は言えない、という感じの雰囲気でした。そこで私は、その「出音」という意味はわからなかったのですが、表情ひとつ変えることなく、
そうなんですよ。出音で…
と、知ったかぶりをして答えたのでした。でも頭の中では、出音ってあんた、出てない音のサステインが長い短いって話にならないだろ、音は出るものだろ、なんだよ出音って、それはどういう意味なんだ…、と自問していました。
今でもこの「出音」という言葉の正確な意味を知りません。多分、アンプを通した時の音だろうとは思うのですが、生音についても「出音が〜」という方もたまにいるので、自信がありません。こういう符牒のような言葉は音楽・楽器の世界には他にもいろいろありそうです。