最近、『メイド・イン・ホンコン/香港製造』という映画を観ました。もともと1997年、つまり21年前の映画らしいのですが、最近デジタルリマスターされたらしく東京・有楽町の映画館まで観に行ってきました。
この映画、疲れました。体力が要る映画です。圧倒的な負のエネルギーに満ち溢れていて、途中から疲れてきます。脚本は、ひどいと思いました。自殺する少女が残した遺書などは、物語にとってほとんど意味がないように感じられ、全体が「物語的な」意味ではかなり弱い。
ジャズ・スタンダードで言うなら、曲が悪い。メロディもコード進行も悪い。ひどい。
でもこの映画のすごいところは、使っている楽譜が最悪とも言えるクオリティなのに、観客をエンドロールまで力づくで引っ張って行くところです。その熱量です。勿論、途中ダルいところもありました。主人公がはじめて人としてヤバい仕事をやろうとしてうまく行かないところとか、説得力がなく白々しい演出が続きます。青臭くて観ていられないようなシーンが多々あります。
脚本がとにかくダメだと思った。でも最後まで観させる熱量がありました。その熱量が圧倒的なので、最後まで観られたのでした。これは才能だろうな、と思いました。作曲能力はゼロに近いけれど、演奏能力がすごい。そんな映画でした。
これはたぶん「ロケーションが持っている力」もプラスに作用していて、香港に行ったのことのある人ならわかるあのヴァイブがそこにあります。香港には尖沙咀 (チムチャーツイ)いう、世界で一番人口密集度が高いとされる界隈があるのですが、そこはぼんやりとは歩いていられないところで、ものすごいノイズと喧騒があり、みんなぶつかり合うように歩いています。そのへんで串に刺した昆虫の焼き物とか売っています。
もうそういう映画でした。尖沙咀みたいな映画。どっと疲れました。もう1回観るかと言われたら、観ないし、他人にオススメするかと言ったら、しないし、作品の評価を問われたら、沈黙するしかない。熱量だけで持っているような映画。物語の支えは必要としていない。
音楽で言うなら、これに近い感じでした。