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君は本当にステラが好きで弾いているのか?

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先日マイク・モレノが人気スタンダード曲”All The Things You Are”の起源と歴史を紐解いているインスタ投稿をこの記事で紹介しました。

All The Things You Areはこんな姿でもあった
最近マイク・モレノがインスタグラムですごく面白い投稿をしていました(moremike78)。「ステラ・バイ・スターライト」と「オール・ザ・シ...

彼はその前に”Stella by Starlight”(星影のステラ、ステラ・バイ・スターライト)についても書いています。相変わらず耳の痛い「知らないとダメだろ?」という愛の説教系・親父の小言系投稿なのですが、これも大変勉強になるのでご紹介。譜面4枚と写真が1枚。画像の上にカーソルを持ってくると右に矢印が出て画面をめくれます(スマホの方はタップ)。

9 out of 10 lessons I give, and also students I listen to at schools all over the world, the students want to play Stella By Starlight as their 1st song. I always ask…But why, Is that your favorite tune? The look of bewilderment always is a funny sight. Because I know the answer is, no. Most people don't know why they are playing that song or where it comes from and have never checked out it's history. They were just given the song to learn by some teacher who probably doesn't know either. Why is that the one song everyone "knows?" I don't have an answer. It's great but so many songs are great. So if you're going to claim to know it and it's your 1st choice and you play it every gig, then know it. It's from the movie score by Victor Young for "The Uninvited," a horror movie from 1944. The 1st time we ever hear the song it's on piano, solo, in D Maj. A serenade written by the main character for his love interest Stella Meredith. He plays the 1st few bars in one scene thinking of her and she asks in another scene for him to "play something" and he plays it almost to the end of the bridge "A Serenade to Stella By Starlight" he calls it. Harry James records it the next year in DMaj and it becomes a hit song. Lyrics are added in 46 and Frank Sinatra records the 1st version with the new lyric in 1947 in GMAJ. Although Charlie Parker records it in Bb with strings in the early 50s, it's not released till decades later. Stan Getz does it in G in 1952 and changes the first 3 chords to the #4 minor to 7 dominant to 1 Maj. Chet Baker in 1954 does the same but #4 Half Diminished is the first chord, and in the 3rd bar goes to the min2 then 5, which makes more sense with the original. HIS version is what everyone today plays in schools and is in real books, but in Bb for some reason. Miles, like Charlie Parker, records it in Bb in 58. Most people say that Miles is their reference for this song but they don't play the changes he used. They're playing Chet's version in Bb really. I put the earliest recording of each key as the main chords. And later versions are in "" underneath w/ initials of who used them. *In GMAJ V1 3rd chord of B is Cmin6, not F9* #stellabystarlight

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以下、抄訳です。

10回のレッスン中9回は、あと世界中のスクールで学生の演奏を聴くんだけど、彼等はファーストコールとして「ステラ・バイ・スターライト」を弾きたがる。僕はいつも尋ねるんだ…でもどうして、それは君のお気に入りの曲なのか? と。彼等が見せる戸惑いの表情はいつも見ていて面白い。何故なら僕は知っているからだ、答えは「ノー」だと。

大部分の人々は、自分がなぜその曲を演奏しているか、その曲が何処から来たのか知らない。曲の歴史を調べたことも決してない。彼等はただ何処かの先生から、課題曲として与えられたんだ。多分先生もよくわかってない。

どうしてステラはみんなが「知っている」曲なんだろう? 僕にはわからない。ステラは素晴らしい、でも素晴らしい曲は本当にたくさんある。だから君がステラを「知っている」と主張し、最初に弾きたいのはそれだと言い、どのギグでもプレイするなら、知ることだ。

これは「招かれざる客(The Uninvited)」という1944年のホラー映画のためにヴィクター・ヤングが作曲したスコアからの曲だ。この曲をはじめて耳にできるのは、DMajでのピアノ・ソロだ。主人公が自身の愛の対象であるステラ・メレディスのために書いたセレナーデだ。彼はあるシーンでステラのことを考えながら最初の数小節を弾き、他のシーンでは彼女が「何か弾いて」と言うので、彼が「星影のステラへのセレナーデ」と呼ぶ曲をブリッジの最後あたりまで弾く。

ハリー・ジェイムズがその翌年、DMajで録音してこの曲はヒット・ソングとなった。1946年に歌詞が付けられ、フランク・シナトラが1947年に新しい歌詞で、GMaj7で最初のバージョンを録音した。

チャーリー・パーカーは50年代初頭にBbで録音しているが、発表されるのは数十年後だ。スタン・ゲッツは1952年にGで録音しているが、最初の4つのコードは#4マイナーからドミナント・セブンス、そしてIMajへとコードが変えられている。

チェット・ベイカーは1954年に同じことをやっているが、最初のコードは#4ハーフ・ディミニッシュで、3小節目はマイナー2度から5度へと動く、これはオリジナルとより整合性がある。チェットのバージョンこそ、今日誰もが学校で演奏しているものであり、リアル・ブックに残っているものだ、ただ何らかの理由でBbになっている。

マイルスもチャーリー・パーカーのように、1958年にBbで録音している。ほとんどの人は、自分はマイルスを参考にしていると言うが、実際はマイルスのチェンジを使っていない。彼等は、本当はチェット・ベイカーのチェンジをBbで演奏しているんだ。各キーの最初期の録音をメイン・コードとして書いておいた。後のバージョンはその下に、””内に使用者のイニシャル付きで書いてある。*GMajのヴァージョン1、Bの3番目のコードはCm6であってF9ではない。

モレノ先生が言及している1945年のハリー・ジェイムズの録音はこれでしょうか。0:28までイントロです。もともとDの曲だったんですね。最初のコードがDdimMaj7、トニック・ディミニッシュ。今日のバージョンの「半音下のドミナント・セブンス(b9)のII-V分割」の起源です。

1952年のスタン・ゲッツの録音。キーはG。最初のコードはC#m -> D7 -> GMaj。本当だ、#IVmだ…

1954年のチェット・ベイカーの録音はこれかな。C#m7(b5) -> F#7 -> Am7 -> D7 – Dm7… #IVm7(b5)で最初に録音したのがチェットなのかな? 興味深いです。

1958年のマイルスの録音。冒頭、GmMaj9/Bb -> A7(b9, b13), Cm7 -> F7(b9)。ピアノはビル・エヴァンス。4段目のFMaj7 -> Em7(b5) -> EbMaj -> D7(b9)の箇所はルートが半音で綺麗に下行していて、確かに今夜も世界中のジャム・セッションで使われるであろう進行とは雰囲気が全く違います。

マイク・モレノ氏のこれらの楽曲探求から、私達は何を学べるのか。いちばん大事な教訓は恐らく、「無自覚なままでやるな」ということではないかと思います。

ステラはBbで、Em7(b5) A7(b9)と書いてあるから、それでやる。最初はそれで良いとしても、そもそも何故それは#IVm7(b5)なのか。君はそのサウンドが好きなのか。この曲はもともとどうだったのか、考えてみないか…そういう問いかけがあるような気がします。

モレノ先生のこういう投稿が単なるアカデミズムでないことは言うまでもないことでしょう。たくさん聞いて山のように楽譜を書いてメモを取るモレノ氏。それでいて熱く弾きまくる… 何かこの記事を書いていて、何をするにしてもプライドのないことはやるんじゃないぞ、と言われているような気がして、冷や汗が出てきます。モレノ寿司で包丁を握らせてもらえる日は、果たしてやってくるのか…


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