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中国共産党とJASRAC

むかし中国の人と話をしている時、共産党についてどう思うか、とよく聞いたことがあります。すると多くの場合、彼等の表情には一瞬戸惑いが現れて、まぁいいんじゃない、まあまあだよ、的な、当たり障りのない言葉が出てきたものでした。(できればその話はしたくない)という雰囲気を感じたので、今では中国大陸の人にそういう質問をすることはなくなりました。

中国は巨大な国なので、強い権力がないと国を束ねきれない。権力基盤が弱いとあっという間に崩壊する。そのため体制に文句をつける活動家などは危険極まりないのですぐに拘束する。いくばくかの自由が犠牲になる。そういう理不尽なことが起きているのを、中国の常識的な一般人はよく知ってはいる。

しかしいま、彼等はとても豊かになった。所得が増えて、良い物を買ったり国内外に旅行できるようになった。安全な生活も保証されている。だから共産党に積極的に文句を言わなくなった。誰だって安心で快適な生活を求めている。それが得られるのなら、表現の自由をある程度犠牲にしても仕方がない。彼等はどうもそう考えているように見えます。

日本にはJASRACという著作権団体があって、多くのもめごとが起きています。著作権を適正に管理する、強力な権限を持った団体は必要である、というコンセンサスはあるものの、JASRACによる著作権管理・印税配分の手法には多くの問題があり、オペレーションに改善の必要があるのは明白なのに、なかなか改善されない。それでみんな怒っている。少なくともJASRACを尊敬している人は誰もいない。

ドラマーのファンキー末吉氏は、もう何年もJASRACと戦ってきているけれども、同じように憤っているミュージシャン全員が共闘しているかというと、そんなふうになってはいない。多くのミュージシャンは、特に有名な人になるほど、JASRAC問題について語る時は歯切れが悪い。できればその話はしたくないのだ、という雰囲気が出ている。

JASRACと契約していて、JASRACから振り込まれるお金がないと生活に影響が出るミュージシャンは、JASRACと戦いようがない。その様子は、少数民族に対して行われている様々な弾圧に対して理不尽さを感じながらも、自分の人生のためにはやむなし、という感じの中国の人々によく似ています。

その歯切れの悪い態度を糾弾する資格は、たぶん誰にもないのでしょう。誰でも生きていかなければいけないのだし、幸福で安定した生活を求める権利がある。とはいえ時々、本当に時々であっても、チベットやウィグルの人達はいまどういう生活をしているのか、ファンキー末吉氏の戦いはどうなったのか、と思い出してみるのが、人の道ではあるまいか、と思うのであります。

 

ファンキー末吉
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