アメリカの中古楽器売買サイトReverb.comにギブソンとエピフォンのギターにおける材質や構造、品質における違いを詳述した記事があり、大変勉強になったので要点を箇条書きで整理してみました。要点といっても長いので、ご興味のある方はブックマークなどしてお読みいただけると幸いです。
価格はどれくらい違うの?
ギブソンとエピフォンの主要モデルのメーカー希望小売価格(米国)は次のようになります。平均で$1,578.63も違っています。同じモデルを買う時に17〜8万円の差額が発生することになります。
モデル名(Gibson/Epiphone) | Gibson価格 | Epiphone価格 |
Les Paul Standard Traditional /Tribute Plus | $2,899 | $749 |
SG/G-400 Pro | $1,399 | $349 |
ES-335/Dot | $3,299 | $459 |
Les Paul Studio | $1,499 | $359 |
Flying V/Hinds Custom V | $1,539 | $799 |
Explorer/1984 Explorer EX | $1,539 | $729 |
ES-330/Casino | $3,299 | $599 |
木材と構造の違いは?
- どのタイプの木にも、異なった地域で生育する様々な種(species)が存在する。そのためエピフォンがギブソンと同じタイプの木を使っているように見える場合でも、その木はエピフォン工場近辺から調達されたものであったりと、同じ種類ではないことがある
- ローズウッドとメイプルについては、両社が使用している種はかなり似通っている
- マホガニー材については、純正マホガニー(genuine mahogany)である場合ギブソンははっきりそれを使用していると書く
- エピフォンは、マホガニー属の中でもより安価で調達しやすいサペリやルアンといった木材をしばしば使用するが、そのことを明記しない
- 過去、エピフォンはマホガニーの代わりにアルダーやバスウッドを使用していたことがあった
- メイプルにも様々な種類はあるが、肝心なのはグレードと厚み。ギブソンは大部分のレスポールに削り出しメイプルトップを表材として使用しており、外観とトーンの重要な要素となっている
- エピフォンは概して、ボディ材とは異なる様々な木材を表材に使用している。大部分は薄いメイプルのベニア。多くのメーカーがフレイムやフィギュアド・メイプルのためにこの方法を採用しているがエピフォンはプレーントップでもこれを使う
- ギブソンもエピフォンもボディには何枚もの木材を貼り合わせているが、ギブソンは2〜3積層までが多い
- エピフォンはより多積層。これを隠すためエピフォンは多くの場合ボディ材のソリッド・ベニアを背面に貼り付けるが、この構造はギブソンのギターには見られない
- ギブソンのESの大部分は「メイプル・ポプラ・メイプル」または「メイプル・バスウッド・メイプル」の3プライ構造だが、エピフォンのSheraton, Riveraのようなモデルは5プライ構造となっている
- しかしES-175 Premiumのようなモデルは例外で、ギブソンのような3プライである
- あなたが「ギブソン・サウンド」を求めているならこれらの木材の違いは知っていたほうが良いだろう。しかしこれらはエピフォンの価格の秘密でもある
ハードウェアの違いは?
- 大部分のギブソンのサドルはチタン。カスタムショップやヒストリックモデルにはインハウス製造のパーツが使われるが、 PingやGotoh、ToneProsといったメーカー製と思われるハードウェアも採用している
- ギブソンのブリッジは現在ほとんどがアルミ製だが、近年はザマックという亜鉛金属が多用されていた。これはエピフォンも同様だが、より安価なパーツが用いられている
- ギブソンのパーツがベターではあるがM2やSシリーズでは非常に低品質なブリッジが採用されていた。「ライトニング・ブリッジ」にも不良があるという声が多い
- ギブソンはナットにコーリアン(1965年に米国デュポン社の研究開発により生まれた人造大理石)に似た素材を使用するが、エピフォンではプラスチック製であり仕上げが丁寧ではない
- チューナーは両社とも自社製からグローヴァー製まで採用するが、エピフォンは時に品質の悪いノーブランド品を採用することがある
ピックアップの違いは?
- 近年までギブソンはギブソンのピックアップ、エピフォンはエピフォンのピックアップを採用していたが、最近は事情が複雑になっている
- エピフォンのES-175プレミアムはギブソンUSA製ピックアップを採用し、ギブソンのM2はエピフォンのProBuckersピックアップを採用している
- ギブソンはFirebird ZeroやSシリーズ向けにUSA製の新型ピックアップを開発してきたが、かつてのSuper 57同様、評判は芳しくない
- エピフォンはEMGピックアップを採用することもある
- エピフォンのエントリーモデルはスイッチやポットの品質が劣っていて壊れやすいことも考慮しておくべきである
塗装やフィッティングの違いは?
- 元記事の著者の印象では、ギブソンのミッドレンジ〜ローエンドモデルはエピフォンのハイエンドモデルよりも品質上問題があることが多い
- 新品で購入した2014 Gibson ES-335には新古品で購入したES-175 Premiumよりも品質上の問題があった
- フィッティングについては多くの場合ギブソンに軍配が上がり、フレット端の処理などは丁寧。エピフォンはその点雑で演奏性が劣る場合がある
- ES-335, Rivera, Sheratonのようなエピフォンの低価格セミホロウモデルの多くは、ネックがポケットにフィットする部分の削り方が不均衡だが、ギブソンではそのようなケースを(著者は)見たことがない
- エピフォンのFホールの仕上げはギブソンのそれよりやや雑である
- ギブソンの塗装はニトロセルロース(ラッカー)で、エピフォンはポリウレタンである。一般的にラッカー塗装のほうが音が良く、育つが、ダメージに弱い。ポリウレタン塗装はボディの振動を妨げるが、丈夫である、という意見がある
まとめ
ギブソンとエピフォンから似たようなギターが出ていても、具体的に材料がどのように違うか、構造・製法もどのように違ってくるかがわかる内容だと思います。コスト面の制約が材質だけでなく、結果的に構造にも影響を及ぼしているらしいのが面白かったです。
近年はエピフォンの工場があるインドネシア・中国・韓国の製造技術が高くなっているため、ハードウェアの交換を前提にすると安価なエピフォンも決して悪くない選択肢になっていると言えそうです。
個人的に興味深かったのは、「ギブソンのミッドレンジ〜ローエンドモデルはエピフォンのハイエンドモデルよりも品質上問題があることが多い」というところ。いまES-175を買うならエピフォンのES-175 Premiumのほうがいいのかな、と思ったりもしました。が、最終的には実際に弾き比べることが大切なのは言うまでもありませんよね。