いま”The Grant Green Story”という動画がYouTubeにPart 1からPart3まであって(そのうち消えるかもしれませんが)、台所で晩御飯用のネギなど刻みつつFire HDで見たりしていたのですが、Part 2でジョージ・ベンソンが面白いことを言っていたので抄訳で紹介します。下の動画の1:07付近ではじまります(初回はそこから再生します)。
(1:07-)グリーンは、ギターがホーン楽器と同じくらい重要だというチャーリー・クリスチャンのコンセプトをえらく気に入っていて、自分のことをある意味チャーリー・パーカーだと思っていたんだ。僕にとって彼はまさにパーカーだったよ。彼のギターの明瞭さは右手のピッキングの仕方から来ていた。彼は自分が弾きたい音だけを正確に、熱心にピッキングしていて、本当にすごかったよ。音色はスーパークリーンだった。
あとグラントが弾いていたリックがあって、彼はそれを弾く時、何か問題を感じていたんじゃないかと思ったんだ。勿論彼はそれを美しく弾くんだけど、こういうシンプルなリックなんだ[ベンソン歌う]、一体何が問題なんだろう、って思って、ギターを手に取って弾いてみたんだけど、僕は弾けなかったんだ。このリックはかなりヘンだと思った。
ハリー・コニック・ジュニアと共演していたギタリストがうちに遊びに来て、グラントの遺作の「Easy」を聴いてくれよって僕は言って、聴いてもらったら彼もそれを気に入ってね、でも一体そのリックのどこが問題なんだって言うから、ちょっと弾いてみてくれよ、って言ったら、彼は僕のギターを取って弾きはじめたんだけど、僕と同じところでひっかかったんだよ!
グリーンはとても美しくフレージングしていたけど、彼は2つか3つの音を弾かないことがあった。そうすることで聴いている人は残りの音を感じることができた。それが単にギターを弾くということと、ギターを歌わせられるということの違いなんだ。グラントのフレージング・アプローチはかなり普通ではなくて、それが彼のプレイを魅力的にしていたし、彼のフレージングのシンプルさはギタリスト以外のみんなにとっても魅力的なものになっていたんだよ。
ジョージ・ベンソンが歌っていたのは「Easy」収録の”Empanada”という曲のリックだと思います。譜面にすると下のような感じの、Eブルース・スケールのフレーズ。
実際弾いてみたのですが、確かにビミョ〜に弾きづらい気も…とはいえ、ベンソンほどの人がこのフレーズにひっかかるというのはどうも考えにくいのですが、彼が言わんとしていることは何となくわかるような気もしました。パット・マルティーノみたいにバリバリと全部弾いたらなんかちょっと違うかも。違う音楽になってしまう。グリーンは「飲む」感じの音も多い…
グラント・グリーンのプレイは、それがわざと音をとりこぼしているのか、テクニック的な何らかの問題があって弾けていないのか判然としない場面が確かに少なからず感じられて、それが彼の音楽の独特の魅力に繋がっているかなとも思うのですが、リスナーが音符を感じられるんだ、というベンソンの言葉は、なるほどー、と思ったのでした。
グラント・グリーンはどういう気持ちで上のリックを弾いていたのか、ベンソンが何故それを弾こうとして引っかかったのか、今ひとつ私にはよくわからないところもあるのですが、グリーンが「意図的にみなまで言わないような弾き方をしていた」ということは考えたことがなかったので、その意味で興味深い内容でした。