ジュリアン・ラージが2016年8月のGuitar Playerでのインタビューで、テレキャスター愛について詳しく語っています。何故テレキャスなのか。フルアコとはどう違うのか。ジュリアンの気持ちが伝わってくるイイ内容だったので、その一部を日本語でざっくり紹介したいと思います。
テレキャスターには、アーチトップギターでは出来ないどんなことがあるように感じていますか?
どんなギターでも何でも出来ると思うけど、テレキャスターの大好きなところはそこから得られるフィードバック。もしフレーズやニュアンス(gestures)のことを考えず、細かすぎてテクニカルすぎる弾き方をしてしまうと、テレキャスターサウンドの気持ち良さが途端に減ってしまうんだ。上手に弾けていると、テレキャスターはまさにその人みたいにサウンドするよ。
アルバム”Arclight”で使用したギターはカスタムメイドのギターなのですか?
あのギターはダノキャスター(Danocaster)だよ。60年代のテレキャスターをベースにしている。10インチ2発のTweed ’53 Fender Superアンプと、StrymonのFlintを通している。ジム・ルクレア(Jim LeClair)のテレキャスターも何本か持っていて、そのうち1本はシンライン。僕はロン・エリス(Ron Ellis)というピックアップ職人に夢中で、オリジナルの’54 Fender Telecaster以外は、全部彼のピックアップを付けているんだ。そのピックアップはギターと同じくらい重要だと感じている。
ツアー中のセットアップは”Arclight”とは少し違って、黒いピックガードの’54 Fender TelecasterをTweed ’58 Fender Champに通している。この組み合わせには歴史的な何かがある。ソリッド・エレクトリック・ギターの誕生時の組み合わせだからね。僕はフェンダーの歴史が大好きだ。古い機材と、発明に溢れていたあの時代が大好き。
テレキャスターを弾くことによって、テクニック上で何か調整する必要はありますか?
間違いなくあるね。僕のバックグラウンドはジャズ流のオルタネイト・ピッキングで、おかげでかなりのフレキシビリティと、スピードも必要な時には得られるんだけど、本当に若い時からギターをはじめたこともあって、僕のタッチはいつもとても硬いものだったんだ。ギターから何か音を引っ張り出す、というイメージをいつも持っていたよ、結果は必ずしもそうならないとしても。音を外に引っ張り出そうとするために役立つことの多くが、テレキャスターでは入力過剰(overpowering)になってしまう。より詳しく言うと、右手が運転席、という考え方なんだ。テレキャスターの場合、右手に意識をフォーカスしている時には聞こえてこないような官能性がある。右手のことをあまり考えない時、あるいは左手と右手を一緒のものとして考える時、ご褒美のような繊細さと流れるような速さが得られるんだ。それでもボディとネックを振動させたいのだけれど、より短い距離でそれを行う。何かインパクトのあるものをやりはするんだけど、ピックアップまで半インチ、ピックアップからアンプへと伝わるようなものをやる。アコースティックギターを運転するような感じでテレキャスターを運転しているようには感じない。テレキャスターと、アンプと、自分のテクニックは全部でひとつの楽器として捉えるようになったよ。
ソリッドボディのギターから得られる長いサステインやアコースティックな残響の欠如が、あなたの作曲に影響を及ぼしたりしますか?
わかってるね!テレキャスターでは音が長く響くし、鳴りも違う。多くのアコースティックギターでは、音の減衰のシェイプにミュートされたような質感があって、それによって自分のタイミングのことがわかる。テレキャスターを弾いていて気付いたのは、音が全部放射(radiate)されてしまったら、ちょっとやりすぎな感じになること。僕はずっとアンプのリバーブを使わずに練習してきて、どのタイミングで音を消したり出したりするかを計ってきた。何年もアタックのこと、音をどうやってピックで弾くか、それはどんな音なのか、ソフトなのか、ブライトなのか、そういうことを考えてきたんだけど、テレキャスターでは音が終わった後のほうがより大事なんだ。その音はどうやって終っていくのか? 上手にやれた時は、アコースティックでもエレクトリックでもないようなサウンド、とにかくクールなギターのサウンドになるから、それが大好きだ。
テレキャスターで使っている弦のゲージは?
ここ1ヶ月ほどはダダリオの.011を使っている。3弦は巻き弦。ずっと.012を使ってきたけど。
どんなピックを使っていますか?
アコースティックギターではBlueChipのピックを使う。ほんと減らないんだよ。ミディアム・サイズのトライアングルのもの、TPと呼ばれる50サイズ、1と1.5ミリの中間の厚みのものを使っている。テレキャスターでは、もっと自由に選んでいる。ダダリオのエクストラ・ヘヴィの標準的なピックかな。昔のフェンダーのエクストラ・ヘヴィみたいな感じ。頻繁に違うピックを使うことで気に入っているのは、「これが僕のピックの持ち方だ」みたいなガチガチな状態から自由になれること。BlueChipがいちばん僕の手に馴染むものだとしても、テレキャスターを弾くには重すぎる習慣が付いてまわってくることがある。時々、ピックは使わないこともある。できる限りローテーションでいろいろ変えるのが好き。
ジャズを演奏する多くの人々はとてもシリアスな雰囲気ですよね。あなたが演奏している時は、最高に楽しんでいるように見えます。それは何処から来るんでしょう?
確かにそうだね。僕も死ぬほどシリアスなものは感じる、けれどギターを弾くという行為にはもともと馬鹿げた、とても美しいものがあると思っている。生きるか死ぬか、ということじゃないんだ。実人生にはリスクや危険が存在するんだけど、音楽的な流れの中には崖から飛び降りられるような遊び場があったり、気後れするけど大好きな人に近寄っていくことだってできる。いろんなことを試せるのは喜びに溢れているよ、うまくいかなくたって、楽しくてウキウキするよ!
だいぶ前に下の記事でジュリアンがフォーカル・ジストニアを克服した話を紹介したのですが、どうも上のインタビューを読んでいるとテレキャスターは彼にとって「脱力」と深い関係を持っているような気がしました。
いずれにせよ皆さん、テレキャスターを買うための強力な理由が手に入って良かったですね!ワーッハッハッハッ!
シンコーミュージック
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