例えばAbキーの循環進行があるとします。こういうコード進行です。別名イチロクニーゴー。
AbΔ7 – F7 – Bbm7 – Eb7
これを読むと、こうなります。
エイフラットメイジャーセブン・エフセブン・ビーフラットマイナーセブン・イーフラットセブン
長いだろ!!(笑)とっても長い。AbΔ7を発音しているあいだに最後のEb7あたりまで小節が進んでしまいそうだ。
そこで簡略化。イチロクニーゴーの「イチ」がメジャーセブンスなのは当然で、「ロク」はドミナントセブンスであるとします。「ニー」はマイナーセブンであり「ゴー」はドミナントセブンス。それが頭に入っていれば、コードの属性は省略して、
エイフラット・エフ・ビーフラット・イーフラット
と、短くできる。これでだいぶラクに!循環進行や、トニックをIIIに置き換えたサンロクニーゴーや、逆循環進行(ニーゴーイチロク)や、その他自分にとって大事なコード進行を、12キーで声に出して発音する練習を(頭の中で言うのでも効果あり)、通勤電車の中や、つまらない会議中にやります。考えずに、反射的に、間違えずに言えるようになるのが目標。
でも「エイフラット・エフ・ビーフラット・イーフラット」でも、まだまだ長くて発音しづらい。というわけでドイツ語の音名で呼んでみます。
アス・エフ・ベー・エス
これはとってもラク!速い。各コードが1音節なのでとってもやりやすい。クラシック系の楽器の訓練を受けたことがあってこの読み方を知っている場合、こちらのほうが便利ではないか。これから覚えても良いと思います。ドイツ語でのCDEFGABの実音はこうなります。
C D E F G A H:ツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハー
ナチュラルBが「H」(ハー)になることと、Eが「エー」になるあたりがややこしいかもしれませんが、それ以外は大学のジャズ研などでも耳にしたことのあるサウンドではないでしょうか。
これらをフラット系の音にするには法則があって、各音を「-es」で終わらせます(例外が数個あり)。Bbは「B」と書き、「ベー」と発音します。
Ces Des Es Fes Ges As B:ツェス、デス、エス、フェス、ゲス、アス、ベー
シャープ系の音の語尾にも法則があって、基本的に「-is」で終わらせます。
Cis Dis Eis Fis Gis Ais His:ツィス、ディス、エイス、フィス、ギス、アイス、ヒス
このシステムを使って他のキーの循環進行を呟いてみます。
C A D G:ツェーアーデーゲー
F D G C:エフデーゲーツェー
Bb G C F:ベーゲーツェーエフ
Eb C F Bb:エスツェーエフベー
等々。各音が1音節で完結しているのが素晴らしくないですか。世界各国の音名表記を眺めてみても、ドイツ語がいちばん合理的に見えます。他の西欧語はどれも「フラット」や「シャープ」という単語を付けています(例:B flat、変ロ、Si bemolle…)。
というわけで、音名をドイツ語で読むと便利なことがあるかもしれない、というお話でした。
ところで不思議なのが古代中国と日本の12音の読み方です。これはすごい。1個1個、個別の名前(いくつか重複があるようです)。十二律(日本)式表記でCの循環進行を読むと、
神仙 黄鐘 壱越 双調:しんせん おうしき いちこつ そうじょう
無理ww でもこれ、とっても美しいですね。しかもきちんとダブルシャープやダブルフラットの読み方まで存在しています。
「ブルースでもやりませんか」
「いいですね。勝絶(しょうぜつ…F)でいいですか?」
「うーん、鸞鏡(らんきょう…Bb)でお願いします」
ジャム・セッションでそんな会話が聞こえてきたら雅なことよ(詠嘆)