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ジャズ・ソロギターの様々なスタイル

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ソロギターに興味がある方は多いと思います。最近Jazz Guitar Forumにソロギター、弾きますか?というスレッドが立ちました。私も後ほど参加させていただく予定ですが、この記事ではとりあえず5人の有名ギタリストによるソロギター・スタイルを紹介してみます。

Joe Pass

言わずと知れたジョー・パスから。Virtuosoで衝撃を受けなかった方はいないでしょう。基本中の基本であるDrop 2やDrop 3といったボイシングを流麗に使いこなした上で伝統的なビバップ・フレージングを織り交ぜるスタイルで、ウォーキング・ベースラインまで入った「まるでコンボ演奏が聴こえてきそうな」ソロギタープレイを数多く残してくれました。下はバラード演奏。この動画、やたらと音が良いです。Gibson ES-165っぽく見えるギターも良いんだろうけどホールの自然なリバーブも良いのかな。超絶技巧を駆使したカデンツァを堪能できます。ジョー・パスのこのスタイルの好き嫌いはあるのかもしれませんが、このスタイルがなかったら他の様々なスタイルが生まれてこなかったのは間違いないでしょう。

Tuck Andress

タック・アンドレスのソロギターをはじめて目にした時は衝撃を受けました。ウォーキング・ベースライン、内声のコードを入れつつ余った指でメロディ、右手ではパーカッシブなアクセント。人間はここまで出来てしまうのか、と驚きました。ハーモニクスの打撃奏法なども魅力的です。それでも基本的にジョー・パスが築いたスタイルの発展系であることに変わりはなく、先駆者のすごさがあらためて理解できるような気もします。このマイケル・ジャクソンの曲、彼は若い頃からずっとやっていますね。ちなみにこのGibson L5にはバルトリーニのアクティブ・ピックアップが搭載されていると思います。

Martin Taylor

マーティン・テイラーはジョー・パス・スタイルを王道的に推し進めた人という感じがします。破綻のない丁寧なコードワーク、淀みのないタイム感と完璧な楽器のコントロール、惚れ惚れします。楽器は恐らくピエゾとネック・ピックアップをブレンドできるYamaha AEX1500でしょうか。素晴らしい音がしていますね。下の”Georgia on my mind”ですが、この次に紹介するジョン・スコフィールドのスタイルとの対照が非常に面白いので、是非聴いてみてください。

John Scofield

下はジョン・スコフィールドによる”Geogia on my mind”の演奏です。これは”Jazz-Funk Guitar“というDVD収録のもので、上の3人の演奏とはかなり違うことがわかると思います。理論的な話になるのですが、例えばジョー・パスと同じポジションで同じDrop2コードが見えていても、ジョンスコは5度を弾かなかったり、時にはトップノートとルートだけを弾くなどして、かなり開放感のあるボイシングになっています。このスタイルに至った理由として、僕はジョー・パスみたいなコードを(難しくて)弾けなかったんだ、弾けたら良かったんだけど…と語っていました。メロディとルートだけで十分きれいじゃないか、というこのスタイル、そういえばビル・フリゼールも似たようなことを言っていましたね。”Less is more”の美学とも言えるでしょうか。フレージングもメロディック・マイナー内で音の組み合わせを工夫したり、リハモをしたりすることで美しいサウンドに至っていますが、スタイル・発想自体はとてもシンプル。あとこの曲は半音下げチューニングのKey Ebで演奏していて、ギターらしい開放弦や6度のダブル・ストップなどの表現がリッチ。ソロギターはやはり楽器の特性を活かしたいですよね。

この”Georgia”の演奏、私は最高だと思うんですが、YouTubeのコメント欄には「こんな最悪なジョージア聴いたことねぇ」と書いている人がいます。ちょっと表に出ろ (笑)。まぁでもわかるような気がしないでもありません。マーティン・テイラーのような流麗さ・完成度を求めている音楽ではないと思うので、そういう音楽が好きな人にはこの演奏はダメなのかもしれません。音楽に求めているものがみんな違うんですね。

このSadowskyのエレガットの音、私はあまり好きではありません。ピエゾの悪い面が出ているような感じ。しかしそんなことはどうでも良いのです。この演奏、この音楽の素晴らしさが全てを正当化しているのです。楽器の音が悪い?そんなことはもうどうでも良くなるのです。

個人的にソロギターの入口としてジョンスコのこのスタイルはかなり良いものではないかと思います。ジャズの様々なコードを知らない、という入門者の方でも、メロディをきちんと弾いて、その時のコードのルートをきちんと弾く。メロディがコードの3度だとしたらルートとの関係は10度くらいになるはず。それくらいの開放感のあるコードで曲の骨格を理解していく。分厚いコードは無理に使わなくてもOK。内声を使いたければその後からでもできます。こういうシンプルな発想の延長線上に自分なりのソロギタースタイルを作っていけるのではないでしょうか。ジョー・パスの完全コピー練習はテクニック向上のためにかなり良いとは思うのですが、自分のスタイルを作っていく場合はジョンスコのアプローチを自力で再現していくほうが参考になるような気がします。

John Stowell

ジョー・パスの超絶技巧は、ある意味で流麗さ・華麗さのためにあったと思います。その流れを汲むマーティン・テイラーもそうでしょう。演奏の完成度に貢献するものとしての超絶技巧。しかしジョン・ストウェルにとって、超絶技巧は新次元のサウンドを生み出すために存在するものであるように思えます。とにかく自分にとって納得の行くボイシング、サウンドを追求している感じ。ジョン・スコフィールドやビル・フリゼールとはまた違った感じで「音響オリエンテッド」な雰囲気です。ちなみにこの方はベン・モンダーの最初のギターの先生だったらしいです。スタンド使いはお互いに惹かれ合うようですが(何の話だ)、ベン・モンダーも「退屈なコード」は弾きたくない、という人で、そのあたりは似ているな、という気がします。

私が持っているソロギターの教則本の中から個人的に良かったものを目的別ジャズギター教則本・書籍リスト 〜私の書棚から〜という記事でいくつかピックアップしているので、興味のある方は覗いてみてください。また、ソロギターについて語り合いたい・わからないことがある、といった場合は、Jazz Guitar Forumにお気軽に遊びにいらしてください。ソロギター談義しましょう。ソロギターの練習をするとコンボでの演奏にも良い効果ありまくりです。


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