アナログレコードというモノについて、「音以外」の点で思うところがあります。まずあの巨大なLPジャケット。これにはサウンド以外にも本当に多くの情報が詰まっていました。
下はPat Martino “Consciousness”。岩の上に座っているのですが、当然蓮の葉の上に座したブッダを連想させます。哲学的な人なんだ、というイメージを持ったものです。この人は何を考えているんだろう。仏教に興味があるのだろうか、とか妄想をかきたてられました。
一方、デジタルミュージックから入った人にとってこのアルバムは下のような姿をしていると思います。ジャケットのアートワークが失われています。味気ないなぁと思います。勿体ない。”Consciousness”はこんなんじゃないんだ。あのジャケットあってこそのものなんだ…。これはもうハマグリとホンビノスくらい違う。
LPジャケット裏には参加メンバー全員の名前も書かれています。PAT MARTINO, guitar, EDDIE GREEN, electric piano, TYRONE BROWN, bass, SHERMAN FERGUSON, drums and percussion。すると、このエディ・グリーンという人は他にどんな作品に参加しているんだろう、などと興味を持ったりするのでした。
デジタルだと共演者がわからない。例えばジム・ホールがサイドマンとして参加している演奏を探す場合などに苦労する。レコードを掘っていると「えっこれジム・ホールが弾いているの」と驚いたりんするんですよね。そして、買う。あれはとても楽しい。
あと批評家による解説文。英語なので子供の頃は読めなかったけれど、意味がわからないだけになおさら想像力をかきたてられたものです。何が書いてあるのか知りたくて、英語の勉強しました!わからないところを英語の先生に質問したら「ごめんな、先生、これわからない」と言われたことが多かった。迷惑な生徒だったと思います。
日本のLPレコードには「帯」があり、そこにも様々な情報が溢れていました。下を見るとこう書かれています。マシンガンのように弾きまくる。これがジャズ・ギターだというような傑作。こうしたキャッチコピーには賛否両論ありますが、日本的なレコード文化として面白いものだったのではないかと思います。CDではこの帯が目立たなくなって、mp3になったら消滅しました。
マシンガンのように弾きまくる。これがジャズ・ギターだというような傑作。というコピーは、パット・マルティーノの音楽を非常に限定的な何かに閉じ込めてしまいかねないバイアスの高いものかもしれませんが、子供の頃はこういう他者によるバイアス、フィルターに接することも含めてアナログレコード体験の一部でした。
それにしても”Consiousness”収録の”Along Came Betty”は最高です。パット・マルティーノの名演を一つだけ挙げよ、と言われたら私は迷わずこの曲を選びます。この演奏はまさに「これがジャズ・ギターだというような」傑出した演奏だと思います。今は私は違う方向のジャズを目指しているけれど、この演奏が自分の理想だった頃があります。
音楽は音だけを聴けば良いとも言えるのですが、最近むかし聴いていたアナログレコードを買い戻すようになって、音楽の聴き方がまた少し変わってきました。自分の意識の中で、自分の世界の中でパット・マルティーノという男は何者なのか。自分にとって彼はどんな存在なのか。そうしたことを考えさせてくれます。レコード、良いですね!
Fantasy (2014-08-12)
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