先日、いまライブを観に行くべき日本の新世代ジャズ・ギタリストたち (1) という記事で勝手に紹介させていただいたギタリストの松原慶史さん。この動画ではベニー・ゴルソンの名曲 “I Remember Clifford” を少し変わった形態で演奏されています。素晴らしい演奏ですね。
中盤からのギター・ソロのタイム感も素晴らしいのは勿論ですが、とにかく口笛に感動。自分はこんなふうに口笛を吹けるだろうか。頭の中で聴き取ったメロディを、正確な音程で、上手に表現できるだろうか。と考えさせられたのでした。松原氏の場合は、ギターという楽器のコントロールが卓越しているのは勿論、それ以前にやはり音楽家として本物だからこそこんなふうに口笛でも歌を表現できるのでしょう。痺れます。
バーニー・ケッセルによるギター・インストラクション・ビデオがYouTubeにあり、その中で彼は「頭の中で聴こえたものをギターで弾けるようになる能力。その上で、聴こえたものを手当たり次第に弾いても音楽にはならないので、良い表現を選別する能力。その2つを身に付けることが必要」と語っています(4:22〜)。
ケッセルは、声に出して歌ってもいいし、歌うのが苦手ならハミングでもいい。あるいは口笛でもいい、と言い、「頭の中で聴こえるものを弾く」過程を実演してくれます。彼はこれを “Externalize what you hear” と言っています。聴こえるものを外化する、外在化する、頭の外に出す、ということですね。まず、ギター以外で。
私のような素人の場合、「ギターで上手にアドリブができないのは、ギターが下手だからだ。テクニックがないからだ」と考えてしまうのですが(というか下手なのは間違いないのですがw)、最大の問題はやっぱりそこじゃないんだろうなと思います。
たとえ上手に弾けなくたって、頭の中で鳴ってないといけない。反対にきちんと鳴っていれば、ちょっとくらい運指に失敗しても音楽的なフローは維持できるし、ヴァイブも損なわれない。
下の動画では先日逝去したトゥーツ・シールマンスがギターと口笛で同じラインを吹いています。これも見事ですねぇ。完全に聴こえています。口のコントロールも完全(かなり訓練が必要でしょう)。ジョージ・ベンソンのスキャットも同じですが、本来これができないといけない。
口笛なり、ハミングなり、スキャットなりで自分の頭の中で聴こえるラインを正確に再現する、「外に出す」(ギター以外で)練習は、時々やってみるとものすごく得るものが多いように感じます。私は普段歌わないので正確に半音階を歌うのは難しいし、増4度下がるとか長6度上がるとかぱっと声でやるのは難しいです。
口笛でやっても同じ。やはり難しい。勿論、口まわりのフィジカルを訓練する必要もあるのですが、それ以上に「本当にそれ、頭の中で鳴っていたの? 正確に鳴っていた? 実は音程が定義されてなくてリズムだけじゃなかった?」などと自分を問い詰めることがよくあります(笑)。