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旋法としてのDominant 7th #9

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アメリカにDon Mockという面白いおじさんがいて(様々なギタリストの教則ビデオ・DVDをプロデュースしたり音楽学校のMIで活躍されていたらしい。確かパット・マルティーノに習っていたとも記憶)、むかし彼の著書で練習したことがあります。書名は忘れたのですが、付属CDで彼はこんなことを言っていたと思います。

「Dominant 7th #9というコードがあるだろ。ジミ・ヘンドリックスがパープル・ヘイズで弾くあれだ。あの上でずっと何か弾くとしたら、だいたいこんなダークな感じのものになるんだが(実演)、これはよくあるヴァイブで、普通の意味での旋法(モード)ではないんだが、ほとんどモードのようなものだ」

そこで彼が使っていたのは「拡張されたブルース・スケール」と言って良いような何かだったと思います。その「拡張ブルース・スケール」がどのように生まれるかというと(ここからは私の推測なので理論的な根拠はありません)、たぶんこういう順番ではないか。

まずマイナー・ペンタトニック・スケールがある。これにb5の経過音を加味するとブルーノート・ペンタトニック・スケール(=ブルース・スケール)が現れる。ここに「長6度」を足す。その長6度は、同じルートのメジャー・ペンタトニックの第5音と考えても、マイナー6・ペンタトニックの第5音と考えても、ドリアンの第6音と考えても良い。

さらにその「Dominant 7th #9」というグルーヴにおいては、そのコードをb9thとも捉えて、半音上のディミニッシュも自由に使う。あっと重要な「長3度」と「長2度」も。これはメジャー・ペンタから。クロマティック・アプローチは自由に。ペンタトニックはただの上昇下降以外にも色々なシークエンスで練習しておく。

ちなみに「Dominant 7th #9」の#9はminor 3rdでもあるので、故にマイナー系の音使いがよくマッチします。 …というような内容だったと思うのですが、最近YouTubeで見つけたこの最高のパフォーマンスを見て、その話を思い出したのでした。

ジョン・スコフィールドが上のようなことを考えているわけではないと思うのですが(この演奏では長6度・長3度等はあまり出てこない)、上のような考え方で色々試していくとこのジョンスコっぽい「雰囲気」に辿り着くことはできると思います(雰囲気が理解できたら後はリアルなフレージングをどんどん自分の中に取り込んでいくのが良いのでしょう)。

こういう分析的な考え方が嫌いだという方もいると思うのですが、例えばギターの指板上のあらゆる場所でBb Blues Scale, Bb Minor 6 Pentatonic, Bb Major Pentatonicの位置が飛行場の夜の滑走路みたいにパッと見えるようになると、ジョンスコが何かをやっているかちょっとわかる、みたいな利点はあると思います。

この「拡張ブルース・スケール」(と私が勝手に呼んでいるもの)はジャズの人が普通にジャズ・ブルースを演奏する時に普通に使うモーダルな感じの音列だと思うのですが、確かに特定の名前を聞いたことがありません。もしかすると「ブルージーなやつ」というのが正式名称なのかもしれません。

貴様、名を名乗れ! 「ミクソリディアンです!」
貴様、名を名乗れ! 「リディアン・ドミナントです!」
貴様、名を名乗れ! 「…えっと、あの、『ブルージーなあいつ』です(汗)」

貴様、何奴! という感じでこれは超怪しい。この「ブルージーなやつ」は自分の言語としなくても大抵のジャズ・スタンダードは弾けてしまうと思うのですが、私はちゃんと弾けるようになりたいな。やっぱりこういうのはカッコ良い。


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