2014年のThe Irish Timesにジョン・スコフィールドのインタビュー記事があり、読んでいたら面白いエピソードがあったのでいくつか抄訳でご紹介します。
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Author: Tore Sætre License: CC BY-SA 4.0
彼はビル・エヴァンスやセロニアス・モンク、マイルス・デイヴィスがマンハッタンのクラブで演奏するのを見た時のことを思い出している。しかし哀しそうに微笑みながら、ジョン・コルトレーンのライブを見逃したことも思い出した。なぜならその時ウェス・モンゴメリーが道向こうの別のクラブで演奏していたからだ。
「そのコルトレーンって誰だよ?」彼は若かった頃の自分を非難するように笑って言った。「俺はウェスを見に行くぞ」。
ジョンスコがウェスやビル・エヴァンスをライブで見たエピソードは知っていましたが、こんなふうにコルトレーンを見逃したという話ははじめて聞きました。後になって相当悔やんだのではないでしょうか。
(バークリーに通うようになってから)一ヶ月もたたないうちに僕はビバップ・スノッブになっていたよ。ブルースのレコードを全部片付けて、ベレー帽をかぶってでかいギターに太い弦を張るようになったのさ。
大型のフルアコを買ったのでしょうか。たぶん誰しも一度は大きいフルアコを買うのでしょう。ベン・モンダーでさえチャック・ウェインに学んでいる頃は大きいジャズギターを抱えていたといいます。最初はやはりこのスタイルに憧れるのでしょう。ベレー帽って誰の影響でしょうか。グラント・グリーンかな? ジョンスコみたいなすごい人でもいわゆる「かたちから入った」のが面白い(笑)。
そしてゲイリー・バートンと毎晩のようにセッションしていたジョン・スコフィールドはある日、今ではよく比較されることになったある有名ギタリストの話を聞かされます。
「ある日、ゲイリーが部屋に入ってきて言ったんだ。『ミズーリからやってきた16歳の少年に会った。そしてそいつは、お前より上手い。』」
その少年の名はパット・メセニーだった。スコフィールドとメセニーは、バークリーの同窓生であるビル・フリゼールと並び、しばしばコンテンポラリー・ジャズ・ギターの「ビッグ・スリー」と形容されることがある。しかしスコフィールドはこの表現をはねつける。
「その言い方は嫌いだ」と彼は言う。だが不機嫌な言い方ではない。「それは1975年のビッグ・スリーなんだ。すごいギタリストはまわりに山ほどいたよ。それにジョン・アバークロンビーがいた、彼は僕たちより前にそれ(コンテンポラリー・ジャズギター)をやっていたんだ。」
これは面白いエピソードですね。ゲイリー・バートンは通勤ラッシュに疲れていて、なら人が少なくなるまで僕の家に遊びにきませんかと誘ったジョンスコのアパートで、他の生徒たちとセッションしていたんだそうです。それにしても「お前より上手い」ってストレートですね。ジョンスコはどんな気持ちになったんでしょうか。でも時代を代表する2人になりました。お互いに良い刺激を与えたんでしょうね。
僕が最初にこういう音楽に深く感動したのは、ブラック・ミュージックだったんだ、レイ・チャールズやジェイムス・ブラウン、BBキングといった連中さ、ラジオでかかっていたんだ。…
彼らはアート・ミュージックを演奏していたわけではない。僕は、あれはアートだと思う。でも彼らはアートを目指してやっていたわけではない。
でもね、ポピュラー・ミュージックとアート・ミュージックを区別するってことは、昔からあるけど間違っているよ、それは正しかったことがない。かなり意識的にアート・ミュージックを指向していたものは、意識的にポピュラー・ミュージックを目指していたものと同じくらいうまくいっていなかったよ。
ブルースやジャズをアートと言ってはいけない。そんなに偉いものではないだろう、という意見をたびたび目にします。このテーマについてのジョン・スコフィールドの回答は個人的に納得が行くものです。やっている人はアートだと思っていなかっただろう。でも僕にとってはアートだ。いいこと言うな、と思います。
「僕たちがアーティストとしてやろうとしていることは、僕たちがどこからやってきた人間であれ、正直になること、自分の内側にあるものを弾くことだと思う。あと」
彼はにやっと笑ってこう付け加えた。
「盗めるようならあらゆる人から盗むことさ」
元記事のタイトルは “Be honest, play what’s inside, steal from everyone you can” となっています。いいインタビューですね。